夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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近くの教会で子ども達に学術を教えながら隠遁していた父が家を出たのは1ヶ月前の事だ。 行き先も目的も告げずにひとりで出かけて行った。無くなっていたのは昔父が愛用していた剣だけだった。 アリアと方々を聞いて廻ったが、父の行方を知る者はとうとう現れなかった。
 それがあの日、いきなり見知らぬ男達がやってきて、父エルネスト・カルマールが死んだと告げた。 官僚らしきその男は、表情も変えずに、父が国王に対して謀反を企てたと言ったのだ。
 何がどうなっているのかすぐには事情が飲み込めなかった。 だが男が父の剣を差し出したとき、その鞘に血がこびり着いているのを見たとき、事実はどうであれ父は存命しないのだと確信した。 さらに男は言った。
「この地はおろか、この先、一歩もタニアおよび近隣領に足を踏み入れてはならぬ」
 首都タニアの近隣の街からの追放だった。 窓の外を見ると、家の廻りを兵士が取り囲んでいた。 男は国王の印字の書面を振りかざした。
 もし本当に父が謀反を企てたのならかなり酌量のある処置だ。 近年の事はわからないが、ひと昔前なら、謀反を起こした者の縁者はひとり残らず処刑されていたはずだ。 そこまでしなければ国王としての権威を守れない時代であった。
 男達は幾人かの兵士とともに、カルマール家の家を捜索し始めた。しかし、徹底したものではないようにも見えた。そんな様子を二人はただ呆然と見つめていた。 すぐに終わった捜索のあと、猶予は三日間と言い残して官僚らは出て行った。 つまり三日経ってもここにいるようなら、殺されるか連行されるかということだ。
 しばらくエドアルドはアリアとその場にたちすくんでいた。 父親が死んだと言うのに、ひどくかけ離れた世界のことのように感じていた。父の亡骸を引き取る事は不可能だ。そのまま風にさらされているのだろうか。それともさらし者にされているのだろうか。だがそれさえもどうでもいいことのように思えた。
 なぜ父はそんな事をしたのか。エドアルドにもアリアにもわからなかった。理由ならひとつだけ思い当たることがあるが、父があの事を盾に今更何かを起こすはずがない。 誰かが何かをそそのかされたのだとしても、決してそんなに軽々しく行動する人間ではない。
『あの頑固な父を動かすほどの人物が父の背後にいるはずだ』
「あ」 
アリアが国王の書面を見て、小さく声を発した。
 エドアルドがアリアを振り返った。アリアが手にしている書面が二枚に分かれている。 いや、もともと二枚あったのだ。 二枚目の書面にはこう書かれていた。

 ~エルネスト・カルマールの死の真相を追い、仇を討つ事ことを望むのであれば、人の目に触れずにタニアに入り、連絡を待つ事。これは極秘事項である~

一回読んだだけでは意味がつかめなかったが、何度も読み返すうちにその文の持つ意味が見えてきた。
 父は失敗したのだ。何らかの使命を。 今度は自分がそれを負うのだ。
「兄上…」
アリアがエドアルドを見つめていた。
自分達はすでに巻き込まれている。 無視する事は出来るが…。
「父の仇を討つ」
エドアルドは低くそう呟いた。
無視をすれば、いずれ何らかの形で自分達も消されるだろう。 ならば事の真実を掴んでやろうではないか。 なにもしないよりは、ずっといい。いや、このままでいいわけがない。
「仇は、討つ」
もう一度呟く声には、強い響きがあった。
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いつも楽しみに読ませていただいております。
この頃ペース早いですね~。
それとランキングポチポチしておきました。

ここわたしの知り合いみんなに教えてあげたいですね~。
これだけ丁寧に文章書いてくれている人は中々いないので。
やはり丁寧に書くことこそが解りやすさの秘訣だと、ここにくれば再認識させられます。

武久縞さん。
もしよろしけば、うちのクロロホルムダンディとリンクしませんか?
気が向いたら気が向いたときで良いのでご返事くださいな。

では~。

2006.06.29 18:46 URL | バナナチップボーイ #- [ 編集 ]

バナナチップボーイさん
いつもありがとうございます。
リンク貼らせていただきました。
ランキングもありがとうございます。
おかげさまで訪問してくれる方が増えたような…。
また来てくださいね。

2006.07.02 15:09 URL | 武久縞 #- [ 編集 ]













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