夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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 戸棚から這い出したエドアルドは、アリアに背を向け、窓を見た。
 おとついの晩に突然エドアルドが来たとき、アリアは何かがあったと直感していた。 だが、エドアルドは何も言わずアリアの部屋にこもったままだったのだ。
「賊が入ったと言っていた。 兄上の仕業か」
 答えず窓を外を伺うエドアルド。
「騎士達のあの様子では、ティスナとキアヌを討ち取る事はできなかったのだな」
 エドアルドは騎士達が遠ざかるのを見ていた。
「なぜ早まった事を。 いつも慎重に物事を運ぶ兄上だったではないか。 私には無茶をするなと言っておきながら、自分の方こそ無茶をする」
「必要があったからだ。無茶ではない」
「オリシスはシモーナとたった二人でラースローを追った」
「!」
「本来なら、それが兄上のするべきことではなかったのか」
「オリシスは国王派だ! おれたちを欺いていたんだぞ」
 アリアはエドアルドに目を見開いた。
「あいつは全てを知っていながら、おれやおまえや父を駒のように動かしていたんだ」
 苦々しげに言葉を吐くエドアルドをアリアはじっと見た。 そうだろう。 オリシスは全てを知っていたのだろう。 そうでなくて、どうしてあれほどの動きが出来ただろう。 アリアはようやく納得できた。 国王派という一点を除いて。
「だから何だと言う。 駒のように動かしていたかどうかはわかららないが、オリシスは私たちのために今も走り回っているぞ」
「もともとはあいつが発端だ。 あいつが宮中の争いにおれたちを巻き込み、父上も殿下を陥れるために捨て石にしたんだ。 あいつがおれたちをこんな目に合わせる」
「いまさら!」
 アリアが声をはりあげた。 アリアはエドアルドの瞳に後悔と後ろめたさが混ざった色を見た。 声を落としてアリアは続けた。
「兄上…。 兄上は本当はわかっているはずだ。 オリシスが国王派でないことぐらい。 今までの流れを見れば、オリシスが国王派と言う方が不自然だろう。 あのオリシスのことだ、国王派と見せかけて、その実メルキオ殿下派に与していることぐらい、ありそうなことだ。 兄上だってそう思っているんだろう」
 エドアルドの瞳が揺れた。
「巻き込まれたも何も、起こってしまった事ではないか。 ならば行くべき道を進むしかない。 オリシスが絡んでいたにしろどのみち殿下は父上に命を下した。 父上ほどあの役にふさわしい人物がいるだろうか。 オリシスはきっとどうせなら自分が共に、と思ったんだ。 考えても見てくれ。 オリシスは私たちに不誠実だったか? 確かにわからない部分は多い。 でもオリシスはいつも私たちに最善の方向を示してくれたではないか。 私たちが立ち向かうのはオリシスではない。 この状況を切り抜けるには、この仕事を全うするしかないのではないか」
 エドアルドはアリアの真剣な眼差しに吸い込まれた。 今まで妹がこんなにはっきりと自分の意見を言ったことがあっただろうか。 オリシスひいきに言っているのではない。 アリアはアリアなりにこの状況を把握し打破しようとしているのだ。 それに引き替え自分はどうだ。
 ドアルドは自分の中にあったオリシスへの嫉妬を認めた。 オリシスに比べて何も持っていない自分を卑屈に思いたくないばかりに、他の者の口車に乗り、オリシスが自分たちを裏切っていると信じようとした。 自分ひとりでも仇が討てると意地を張った。
「兄上!」
 そう、今は落ち込んでいる暇はない。 アリアの言うとおり、自分にすべき事はある。
「ナミルだな」
 エドアルドが言った。 間に合うだろうか。
「おまえもここを出ろ。 一緒に行くんだ。 すでにナミルを襲っているとしたら、ここも危険だ」
 アリアは首を横に振った。
「アリア?」
「私はここでまだやることがある。 呪詛の証拠を掴まなくてはならない。 万が一ナミルも失敗したとなったら、オリシスや兄上や殿下のおかれる状況は極めて危ういものになる。 確実な証拠を手にいれなければ」
「アリア」
「ラースローがいなくなってから、書室本を片端から調べた。のこるはこの部屋の一角だけだ。 兄上、私は私の役目を果たす」
 エドアルドがアリアの 肩を抱いた。 細いこの肩で妹は自分の人生を掴み取ろうとしている。いとおしい妹だった。 幸せになって貰いたい、誰よりも。
「もしラースローを討ち損じた場合、おまえの立場は危険だ。 ラースローが戻る前にここを抜け出せ。 いいな」
 コクンとアリアが頷いた。
「今から発つ」
 アリアが慌てて台所から水と食料を詰めた包みを用意する。 小屋に繋いだ馬を林の方へ引いて行き、まわりの農家の死角からエドアルドは走った。

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読みやすい文章の賜物でもあると思いますが、ここまで読んできた自分にも少し驚きです。
そして、ここまで筆を進めていらっしゃいました武久縞さんに尊敬の念を抱きます。
もう終わってしまうのか……

話は変わりますが、次回作に当たるであろう物語も、以前に書き溜めていらっしゃいましたものなのでしょうか。

2006.12.16 20:31 URL | 一九 #- [ 編集 ]

終わるのはもう少し先になりそうです。
編集しなおしていたら、なんだか20章ぐらいになりそうで…。
見通しが甘いこと甘いこと。反省しきりです。

えー、次回作は全体の1/4程度は執筆済みでしばらく中断していたものです。また時代物です。また長くなりそうです。
系図や人間関係がかなりややこしいので、それをどうやってブログで表現すればいいのか…。人名にルビをふったりできるんでしょうか…。
一九さんのように( )書き表現方法を拝借させていただいてもよろしいですか?

次回作に入る前に、もしかしたら短編を入れるかもしれません。まだまだ企画中です。
なんだかとりとめのない回答になってしまいました。

2006.12.17 00:37 URL | 武久縞 #- [ 編集 ]

苦肉の策ですね、かっこつけた。←洒落っ気。
あと、印刷してまで切削をお読みになって下さいまして、本当に有難うございます。嬉しい限りです。
今、「村崩し編」の方を、読みやすくなるように小分けに編集しておりました。次に更新するなら、そちらか「歌を運ぶ風」になりますので。
自分の宣伝ばかりになりましてすみません。今度、自分のブログにてこちらの宣伝をしておきます。効果があるかどうかは疑問でもありますが。

2006.12.17 16:37 URL | 一九 #- [ 編集 ]

ありがとうございます。
ルビは今後の検討課題ですね。いろいろ試してみます。
宣伝なんて、はずかしい。でもうれしいです。
よろしくお願いします。(←ずうずうしい…)

2006.12.18 00:35 URL | 武久縞 #- [ 編集 ]













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