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夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

 熱でうとうとしかけたとき、オリシスは馬の蹄の音に身を起こした。
『シモーナか?』
 だが天幕の方が騒がしい。 早馬か。 コーツウェルで何かがあったか。 それともサリエルが動いたか。 まさかアリアを捕らえるためか?
 自分に付いていた見張りの兵士も天幕の方に首を伸ばしている。と、その首に一筋の赤い線が走った。 声もなく崩れる屍。
「申し訳ありません。遅くなりました」
 シモーナがオリシスの縄を解いた。
「コーツウェルからの早馬のようです。 北宮に賊が入ったとか」
「なに?」
エドアルドか。
「今の内です。 逃げましょう」
「まて、いまが好機だ。 ラースローとオレアルを討つ」
「その傷では無理です」
 オリシスはシモーナが奪い返したオリシスの剣を左手で取った。
「今しかあるまい。 事は起こってしまったのだ。 おれのことが知れた以上…」
 だらりと右腕を下げ、洞窟へ向かうオリシスにシモーナも続いた。
「今は逃げる事です。 これでは」
「おれは死なぬ」
 天幕の外では馬に鞍が乗せられていた。 オレアルが支度をして出てきた。 ラースローを呼びに兵士が洞窟へ入る。 洞窟の入り口の茂みに隠れ、ラースローが出てくるのをオリシスは待った。 その間に手早くシモーナが肩の傷の手当をする。オリシスの肩は倍にも膨れ上がり、高熱を発している。 動くのもつらいはずだ。 これで戦えるというのだろうか。
 ラースローが姿を現した。 不機嫌な表情が見て取れる。 ラースローが背後を見せたところで、オリシスが飛び出した。 気づく兵士をまず切り捨てる。 肩に激痛が走った。
 シモーナが集まる兵士たちを引き受ける。
「ラースロー! 早く馬に乗れ」
 オレアルが叫ぶ。
「そうはさせぬ!」
 ラースローに切りかかるオリシス。 髪一重でラースローがかわし、その間にもオリシスのまわりに兵士が集まった。
「雑魚にかまうな、オレアルを狙え!」
 シモーナは短剣を抜き、オレアルめがけて投げつけた。 が、それは間に入った兵士の額に突き刺さる。
ラースローはその間に馬に跨っていた。
「行くぞ」
ラースローとオレアル、それに二名の付き人が馬の腹を蹴って走りだした。
「まて!」
満身の力を込め、囲む兵士を両断した。強い、と兵士が一旦怯むのを見逃さず、オリシスは馬の行く手を阻んだ。走り来るラースローの馬の足を切りつける。片足を無くした馬がもんどりうって倒れ、馬上のラースローがほおり出された。
「これまでだ。ラースロー!」
オリシスの剣が振り下ろされた。が、背中を切りつけた兵士がいた。その兵士の胴をシモーナがなぎ倒す。ラースローはひとりの付き人の馬を取り上げ、再び走り抜けていた。
「オリシス様」
膝をついて、何とか立ち上がろうとするオリシスをシモーナが支えた。
「ラースローは…?」
「しとめ損ないました。もはや逃げるしかありません」
シモーナはオリシスを抱えたまま、じりじりと後退した。煙幕筒を取り出し、松明めがけて投げた。松明ごと倒れ、数秒後に煙があたりにたちこめた。
 兵士達はせき込み、それでもシモーナの後を追ったが、すでに二人の姿はなかった。
 
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