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夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

「なかなかしぶとい性格ですな。 ここで喋らなくてもこちらは勝手に理由をでっち上げられることが出来るというのに。 同じ事ならさっさと喋って楽に死んだ方がよかろう」
 勝手な事をほざくな。 と床に転がされたオリシスは思った。 侯爵家の子弟に対する扱いではなかった。 肩の治療もさせず、食事もさせず、眠らさせず、剣の鞘で打すえ同じ事を質問する。
「誰の命でここへ?」
 しかしオリシスは笑って答えない。 さらに打たれる。
「お主の望みはなんだ、オレアル伯。 金か? 地位か?」
「だったらどうだと言うのだ?」
「取り引きしないか。 おれにつけば、望みはかなう」
「たわけたことを、青二才が」
 オレアルは一笑したが、表情が変わったのをオリシスは見た。 オレアルの頭の中はしきりにどちらの天秤に自分が乗るか計算しているはずだ。
「考えてもみろ。 時間はあまりないはずだ。 それまでに企みは成功するのか? 保身を思うなら、今の内に別の道も確保しておいたほうが得策というものだ」
 オリシスが国王の歳のことを言っているのがオレアルにもわかった。 そもそも事を急いだのはそれが理由だ。 が、そう簡単に口車に乗せられないと思っているのかオレアルは無言だ。 さらにオリシスは言う。
「おれには仲間がいる。 おれが帰らなかったら陛下に全てが話される。 さて、陛下は本当にご存知なのだろうか。 このナミルで行われている事を」
 オレアルは素知らぬ振りをしようとしたが、表情が硬くなったのをオリシスは見逃さなかった。 ナミルでの呪詛は国王は知らない。全てがティスナが企てたものなのだ。 オリシスは確信した。
「…ほほう、面白いことを。 ではこちらも聞くとしよう。 陛下はご存じなのかな? 国王派と言われているワイナー家のご子息がこのような真似をなさっていること。 まるでメルキオ殿下の下での働きではと疑われてもしかた有るまい?」
 痛いところを衝かれた、とオリシスは舌打ちした。 オレアルも案外馬鹿ではない。 そんな発見が今は恨めしいばかりだ。 これ以上のことを気づかないように何を言うべきか。 しかしオリシスの不安は的中した。
「あのラースローの屋敷に入れた若い男。 あれは確かワイナー家の紹介だったな。 …ほう、なるほど、そう言うことだったのか」
 オレアルはにやりと笑ってオリシスの顎を剣先でしたたかに打ち付けた。
「見張っておけ。 明日の朝、処分する」
 オレアルはオリシスを残し自分の天幕へ戻って行った。 オリシスは空を見上げた。 うっそうとした木々が夜空を覆っていた。 肩が焼けるように熱い。 化膿してきているのだ。 打ちすえられた体の節々が肩の傷みを幾分紛らわす。
 失敗した。とオリシスは思った。 早くアリアに知らせなくてはあいつの命が危うい。 すでにあの屋敷を出ていればいいが、アリアの事だ。留まって証拠を探しているに違いない。 間に合うだろうか、サリエルは、シモーナは。
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