夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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 割った薪を積み上げ、アリアは井戸水で顔を洗い、台所で簡単な昼食をつくった。 三階の奥の部屋に運び、古い書物をめくっているラースローの背中には声をかけず、古びたテーブルの上に置いて台所に戻った。
 着替えのため自分の小屋での戸を開けたとき、人の気配を感じてアリアは戸口に立てかけてある鋤を取った。
「わたくしです」
 暗がりから戸口に一歩踏みだした影はシモーナだった。
「シモーナ…!」
「考えましたね。 ここを部屋としたのは」
「どうした? 何かあったのか」
 今までここにはオリシスもシモーナもエドアルドも来た事がない。 アリアは鋤をもとに戻して扉を閉めた。
「その後動きはありましたか?」
「昨日オレアルが来た。 ラースローと話をしてすぐに帰った。 その前まではエドに伝えたけど」
「街に来たのは四、五日前でしたね」
「ああ」
 エドアルドが言った最後の言葉が蘇った。 「オリシスに気を許すな」。 シモーナに確かめたいのを堪える。 様子が変だった。 ここまできたのも変だ。
「エドアルド様からはなんの連絡もありません。 ここ十日ほど姿が見えないのです。 ここへは?」
「兄上が?」
「いらしてないようですね」
 来たような痕跡はなかった。
「何があったんだ、兄上とオリシスの間に。 知ってるからここに来たんだろう?」
「エドアルド様は何かあなたにおっしゃっていましたか」
 アリアは答えるのをためらった。 もしオリシスとエドアルドが反目しているのだとしたら、話す事でエドアルドが危険にならないだろうか。
「アリア様」
「着替えさせてくれ。 戻らないとラースローに変に思われる」
 考えをまとめる時間を作る口実だった。 シモーナに背を向けてベストとシャツを脱ぎ捨てるアリア。 筋が引き締まった背中がシモーナの目に入った。 思わず目をそらす。 確かにアリアの肢体は少年のように美しい。
「使用人は私ひとりになったんだ。 呪詛騒ぎがあって、ほとんどの使用人は逃げた。 家令はラースローに解雇された。 あの男がなぜ私だけを残したのかわからないけど」
 着替えながらアリアは言った。 エドアルドに会ってないなら、もう一度繰り返すしかない。
「オレアルの来た目的はわからない。 使用人たちのことだったかもしれない」
「いえ。次の仕事の事でしょう。 タニアからの使者が来ました。 マテオ王子が正式に継承権を持ちました。 ティスナ妃の次の標的はマテオ様です。 オレアルが来たということは、近々ラースローが動き出すということです。 我々も彼の動きを追います」
 着替えを終えたアリアが振り返った。
「わかった。ラースローの出かける時期と期間、場所をうまく聞き出せばいいわけだな」
「ええ。 それと、もしエドアルド様がここに見えたら、このことをお伝え下さい。 あの方の手が必要なのです」
「…兄上はここには来ないだろう」
「なぜ」
「私にこの屋敷を出るように言った。 ラースローの事はほおっておけと。 オリシスが知らないなら、兄上は単独で何かをする気なのかもしれない」
「アリア様」
「私は兄上が心配だ。 オリシスと反目している理由も知りたい。 オリシスだって何を考えているかわからないけど、兄上は確かに変だ。 今はどっちを信用していいのかわからない。 でも兄上に不利になるような事だけは避けたい」
「もちろんです。 オリシス様はあなた方のことを考えているのです。不利になるようなことなど」 
「そうだといいけど…」
 アリアには分からなかった。 オリシスのことを信用している。 だが、エドアルドのことも気にかかるのだ。 あのエドアルドが疑心暗鬼になっているのは、オリシスに対してではないのか。
 オリシスのことは実の所何も知らない。 どういうことをしているのか。 シモーナを使って何をしていたのか。 あの狙ってきた男達。 分からない事が多すぎる。 自分で見極めるまで確かなことは何も言えない。
「アリア様」
「私はここにいる。 ラースローのこともまだ調べなければ。 情報はきちんと把握して伝える。 それでいいだろう」
アリアは扉に手をかけた。
「オリシスに心配するなと伝えてくれ。 私はうまくやっている」
「アリア様、ラースローにあまり深入りなさいませんよう気をつけて下さい。 あの男があなたをそばにおいたことが気になります」
「大丈夫。 そうするよ」
 シモーナは出て行ったアリアの残像を戸に映して見ていた。
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