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夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

 翌朝アリアは物置小屋の戸の表側に打つけてある人形を見つけた。 今度は自分の名が記されてあった。
「なんか、やることが子どもじみてるな」
 アリアは、人形を手に小屋の中に戻り、他の荷物のなかに押し込んだ。

 台所の女のひとりが暇をもらって屋敷から出ていった。 娘のお産がとかいっていいたそうだが、あきらかに逃げ出したのだ。 あとの女達も落ちつかない。 これで自分にも人形があったと言えば、どうなることか。
 ラースローは二人目が出ていった事にも、特段感情は現さなかった。 家をとりまとめるなどといった執務に、余計な時間と労力をかけ気はさらさらないようであった。
 新しい紙に清書をしているアリアは、そんなラースローの横顔を観察した。 ラジールにしろ自分にしろ呪詛を受ける謂われはない。 どちらかというと脅しの類なのだ、これは。 今のラースローからはそんな感じは受けられない。 なら、誰の仕業なのだろう。
 手が止まっているアリアにラースローの視線が止まった。
「いつまで時間を掛ける気だ」
 アリアは慌てて手を動かし始めたが、一行飛ばして書き移してしまい、それがまたラースローの叱責を買って冷や汗をかいた。
「盗まれた書物というのは、ラースロー様が書かれたものなんですか?」
 午後の茶を入れながらアリアが聞いた。
「厳密には違う。 私が訳したものだ。 何の値打ちもない。 ただ新しい表装というだけで持ちだしたんだろう。 原書のほうがよっぽど値があるというのに、ばかなやつらだ」
 茶を飲むラースローは皮肉っぽい笑みを浮かべた。 やつらと彼は言った。 それは、自分も入っていると思ってアリアはむっとした。 が、ラースローの言葉のひとつを拾い上げる。
「訳した…?」
 アリアは自分が書き移していた紙を拾い上げて見た。 医学書のようだが、こ難しい用語が並べてあるのではっきりとはわからない。
「遠い東の国のものだ」
「そんな国の言葉もわかるのか」
 自然と口調が元に戻ったことをアリアは気が付かなかった。 そしてラースローも気が付かない振りをする。
「わかるわけない。 シルバキアの学者が訳したものだ。 それを私がまた訳した」
 訳したということは、シルバニア語も医学用語も知っていなければできることではないだろう。 原書も少しは読めるのかも知れない。
「東洋の国か…」
「興味があるようだな」
「あ、いえ、ただ東洋の宗教のことで、人は生まれ変わるっていう」
「輪廻転生か」
「そう、そのことを書いた本があればいいなって」
 ふ、とラースローが鼻で笑ったように見えた。 キリスト教徒のくせにと思われたのかもしれない。 アリアは輪廻を持ち出したことを後悔した。
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小説が載せられない一九です。
こちらの物語は何章まであるのでしょうか。
自分のブログのコメントに寄せて頂きましたリンクの件なのですが、構いませんのでどうぞよろしくお願いします。
笠七第2話は依然停滞していますが、予告を載せておきました。
感想になっておらず申し訳ありません。

2006.09.24 22:30 URL | 一九 #- [ 編集 ]

こんばんは、一九さん。
リンクの件、ありがとうございます。
今週は出張だったり深残していたりと、自分のパソコンもまともに開くことが出来ません。近々遊びに行きますのでその時にリンク貼らせていただきます。

この話、まだ続きます。
気分的にはやっと半分ぐらい…かと。
章立てごとにタイトルでも付ければよかったと、後悔しているところです。

2006.09.29 01:16 URL | 武久縞 #- [ 編集 ]













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