fc2ブログ

夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

 アリアからの情報を一同が読み終えた。
 屋敷内の大まかな間取りから、ラースローの一日の行動、使用人と馬の数。 使用人達の態度、書室の本の種類。 客の出入りは今の所ないこと。 王宮の晩餐に呼ばれて不在である事。
 これらの事が細かい字で一枚の紙に書き込まれていた。
 腕組をしたのはエドアルドである。 オリシスはそんなエドアルドを見て、シモーナは窓の外を見た。
 顔つきが変わった、とオリシスは思った。 タニアでの一件はシモーナから詳細を聞いている。 早まった事をと思ったが、そうせざるを得なかったエドアルドの気持ちもわかった。 あの真面目で人のいいエドアルドの顔は、今は険しくすさんでいるようにも見える。
 エドアルドが立ち上がった。
「証拠などいらん。 討つ者はさっさと討てばいい」
「何を熱くなっている。 焦ってまたしくじる気か?」
「二度と失敗はしない」
「計画は立てただろう。 やるならそれに従え」
「いつからおまえが指揮をとるようになった」
 エドアルドがオリシスを睨みつけた。 オリシスは黙ってその視線を受け取った。 
 シモーナは窓の外を見ながら彼らに言った。
「アリア様が心配ですね」
 ふたりがシモーナを振り向く。
「あの屋敷の中の使用人はオレアルの手先のようなもの。 彼らもまた、なんらかの目的でラースローを監視してるのでしょう。 アリア様がそこまで気づいているとは思いませんが、このままラースローに興味を抱き続けるのは危険です。 彼らとは反する立場にあるわけですから」
 シモーナはアリアがラースローを仇ではなく、人間的な興味を抱いている事まで言う事はできなかった。 シモーナの予想は予想でしかない。 確信があるわけではなかったが、シモーナ自身は真実だと思った。
「オレアルが屋敷を整えた。 たぶん、使用人にラースローを見張るように指示したのはまちいないだろう」
 とオリシスが補足するように言った。 エドアルドは苛立った声でオリシスに詰め寄る。
「初めから予測できたことだ。 なのになぜ今更危険と言う言葉が出てくる」
「ラースローをオレアルから切り放すいい機会だ。 アリアの情報で確信した」
「アリアに話したのか、このことを」
オリシスはうつ向いた。
「はっきりと言わない方が動きやすいと思った。 アリアにはそんな野生的な感がある。 だから」
「シモーナ、教えてくれ。 アリアはどんな興味をラースローに抱くんだ」
 シモーナは窓辺から離れてオリシスのそばに立った。 オリシスは顔をあげない。
「ラースロー個人を知れば、それだけ情もわきます。 その時、果たしてラースローを仇と討つ事が出来るでしょうか」
 オリシスが顔をあげた。 その表情を苦い思いでシモーナは見つめる。
「そして、その葛藤を隠しきれる演技力がアリア様にありますか? 使用人はひとり異質なアリア様の存在をすぐに見抜くでしょう」
「おれは、」
 オリシスが口を開いた。 だがエドアルドが遮る。
「では簡単だ。 そうならない前に、かたをつける。 根元を断つ」
そう言い捨てると、エドアルドは部屋を出て行った。
「なぜあんなことを言った」
オリシスがシモーナを冷たく見据えた。
「有り得ない事ではありません」
「わかっている! だがエドアルドに言うべきことではない」
「本当にわかっておいででしょうか。 オリシス様はあの方達を見くびっておられる。 ご自分の思いのとおりに動くと」
「黙れっ」
 オリシスは握り拳を震わせて立ち上がっていた。 シモーナのいつにない批判の口調に腹がたった。 しかし、それだけではないことも自覚していた。
「出かける。 おまえはオレアルを見張っていろ」
 剣を片手に部屋を出ようとする。 今夜の晩餐にも出なければなるまい。 年老いた父は病気のためタニアを離れる事ができない。 その代理のためでもある。
「ラースローも見張りましょうか?」
 オリシスは振り向いてシモーナに一瞥をくれると、壊れるほどの勢いでドアをたたきつけた。
スポンサーサイト



 ポチっとお願いします→












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://yumenohazama.blog69.fc2.com/tb.php/49-19436713