夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 ポチっとお願いします→
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
「つけられているな」
 オリシスがアリアに何気ない様子で伝えた。
「えっ?」
「後ろに四人」
 タニアを出てまだ間もない。 いつ、どのようにして自分達を見つけだしたのだろう。
「どうする?」
 オリシスがアリアに聞いた。
「…時間を稼ぐ。 早いうちにやってもいいが、兄上のことを考えると向こうが仕掛けてくるのをかわしながら、なるべくタニアから遠ざかったほうがいい」
 その答にオリシスは満足してにやりと笑った。
 昼頃には街道も人が多くなってきた。
「何者だ? あれは」
 賑やかな街道沿いの街で昼食をとりながら、アリアが言った。
「オレアルの手先かもしれないし、おれかエドアルドの行動を知るやつかもしれない。 どのみちあまり歓迎しない類の人間だな」
 オリシスは平然とパンをかじりワインを流し込んでいる。 その横顔をアリアはあきれ顔で見る。 
「どうした? さっさと食わねーと…」
「夜までに宿につかないって言うんだろ」
 アリアが手を伸ばした皿をオリシスが取る。
「おれがいただく」
「あーっ!」
 アリアが奪い取るよりも素早く、オリシスは皿の中身を平らげてしまった。
「何をするっ。 せっかく最後にとっておいたのに、くーっ!」
「ま、アリアンちゃんたら、そんなに怒らないでよー」
「気色悪い言葉を使うな!」
「油断するからいけないんじゃないのー」
「このーっ! おいっ店主! 勘定だ。 全部こいつが払う」
 廻りの客がこの二人に注目する。
「おれそんなに金もってねーぞ」
「自分が殆ど食ったくせに。 わたしだってそんな余裕はないっ」
 オリシスは舌打ちしながら小銭を数え、皿の横に置く。店の店主は小銭に顔を引きつらせるにちがいない。 席を立つとき、オリシスがアリアに囁いた。
「こんだけ注目されれば、あいつらも下手に手出しは出来なくなるさ」
アリアは荷物を担ぎながらオリシスに囁き返す。
「わかるもんか。 人目につかない所で消されたら、どうにもなんないだろ」
「少なくとも金目当てではなくなるだろう」
「反対にこっちが向こうをやっちゃったらどうするんだよ。 金目当てって思われるかもしれない」
「あ、そういうこともありえるな。 おまえ案外頭いいな」
「…ばかにしてるのか?」
 オリシスは鼻でふふんと笑って馬に乗った。

 この時期、気候は暑い。 オリシスは薄手のシャツの前をはだけさせてはいるが、アリアはきっちりとベストを着用し、首にはスカーフを巻いている。 暑くて汗が吹き出ているが、そうしておかなければ胸の膨らみや首の細さが目立ち、すぐに女だと見破られてしまう。
「ふう」
アリアは手の甲で汗を拭った。
 北のコーツウェルは涼しい。 そう言う意味ではこれはいい選択だったかもしれない。
 そういえば、目的であるラースローに対しての情報が少ないのにアリアは気がついた。
「オリシス。 お主は宮廷にも詳しい。 やつに会った事ぐらいあるんだろう?」
 とオリシスに聞いてみる。
 オリシスは馬上からアリアを振り返り、そして、また前を向いた。
「おい、聞こえてるんだろう?」
 アリアは馬を急がせオリシスの隣に並んだ。 オリシスの顔は憮然としている。 なにか気に障る事でも言っただろうか。
「遠目だが、何回か見かけた事がある」
「どんなやつだ」
 オリシスは憮然としたまま憮然と答える。
「女にも男にももてるやつだ」
 つまりオリシスよりもいい男ということか。 アリアはくすっと笑った。
「でも、男にもてるってどういうことだ?」
「さあな。 世の中にはわけのわかんない奴が多いからな」
 アリアは、自分の頭を殴ってきた男達の台詞を思い出した。
『女よりもいいかもよ』
『おれにも回してくれよ』 
 改めて悪寒が走った。
「男が男にもてるなんて、けっこう不幸なやつなんだな」
とアリアは心の中で思った。
「見てくれにだまされるなよ。 やつはそれで宮廷でのし上がってきたんだ」
「それだけじゃないだろう? 国王の主治医にってことは、国王やティスナからの寵愛をうけていることになる」
「寵愛を受けるっていうのはな、他のやつらからのやっかみが激しいってことだ。 その中をくぐり抜けてきたんだ。 世渡りがうまいのさ」
「お主には真似出来ないことかもな」
オリシスはアリアを振り返った。
「おまえがおれにそれを言うか?」
「さあな。 わたしは宮廷に上がった事はないからな」
素知らぬ顔でアリアは受け流す。 オリシスの言いたい事はわかる。 仮に宮廷に上がったとしても、自分やエドアルドがオリシスより宮廷内での地位をもつ事など出来るわけがない。 だが、それ以前に宮廷にあがることなど有り得ないのだ。 惜しくもなんともないが、今更言っても比べようがない。
 アリアは黙ってまだ見ぬラースローなる人物の事を考えた。
 女にもてて、男にももてる。
 容姿はいいのだろう。 口もうまいかもしれない。 なるほど世渡りも上手でなくてはならない。
 アリアはそれらの情報を一旦消した。 先入観で人物像を固めない方がいい。 自分で見て確かめる。 そうしなければ判断を見誤るかもしれないのだ、とアリアは思った。
スポンサーサイト
 ポチっとお願いします→












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://yumenohazama.blog69.fc2.com/tb.php/36-010476be

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。