夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 ポチっとお願いします→
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
 エタニア国の首都タニアに、再び不幸な出来事が起こった。

「神はわたくしたちの子を、なぜそんなに愛されるのでしょう」
 エタニア国、王太子妃アデリーナは、小さな棺に覆いかぶさるように咽び泣いた。
「カミーラにつづいてユーシスまで…。あの子たちがいったい何をしたと言うのです」
「アデリーナ…」
王太子メルキオは、妃の肩を胸に抱き寄せた。
「…殿下…。 お許し下さいませ。 わたくしが至らなかったのです。お世継ぎのユーシスまで亡くしてしまうなんて」
自分の胸にすがって泣くアデリーナの背を、メルキオはそっと撫でた。
「そなたのせいではない」
「ですが、シルバキアの父は何かがあると疑いを持ちますわ」
アデリーナは北の隣国シルバキア国の王女であった。
「病で亡くなったのだ。 こればかりはどうにもならぬ」
 そう言ったものの、メルキオの瞳は空の一点を睨み付けていた。
『このままではおかぬ…』

 エタニアの国王オルギウス二世は67歳と高齢でありながらまだ国を治めていた。 王太子のメルキオは42歳。 戦乱を生き抜いてきた豪傑なオルギウスとは逆に、温厚で人望も厚く、知己に富み、鋭い決断力をも持ち合わせる人物と国内外での評価は高かった。
 それもそのはず、政治の実務は今ではすべてメルキオがこなしており、ただ昼に夜に宴を催しては国庫を浪費している国王を見れば、さすがに臣下たちも国王よりもメルキオにかたむくというものだ。
 そんな噂が耳に入れば、我が息子のこととはいえ、国王オルギウスにとっておもしろいはずがなく、何かにつけてはメルキオの判断に口をはさみ、政策を二転三転させ国内に混乱をまねいていた。

 国王オルギウスにはもう一人息子がいた。
 側室に生ませた子で、11歳になるキアヌである。 容姿も学力も人並で、特に傑出したところはなかったが、年をとってからの子ということで、オルギウスはこの息子を盲愛していた。
 そんな折り、メルキオの長女カミーラが高熱を発し急逝した。 15歳になるかならないかの乙女ざかりだった。 死因は熱病だが、何が原因で発病したのか結局不明のままだった。 シルバキア国との縁談が決まったばかりだったため、何者かによる暗殺も噂された。 王太子妃に似て、愛らしく美しい姫君の訃報は、タニアの街を沈ませた。
 そして、そのわずか半年後、今度は若君のユーシスまでが同じように高熱で身罷ったのだ。
明るく闊達だった11歳の王子の死を嘆く皇太子妃のアデリーナはとうとう病の床に伏せてしまった。

「そなたがしっかりしなくてどうする。まだ幼いマリオスやユリアがいるではないか。あの子らの為にもそなたが元気にならなくては」
 メルキオがやつれたアデリーヌを見舞う。
「申し訳ありません、殿下。わかってはいるのですけれど…」
 今、宮中ではアデリーヌがシルバキアの出であるから、王子や王女が殺されたのだとの噂が広まっている。それをアデリーヌも耳にしたのだろう。

 シルバキア国とはかつて領土問題で争いが耐えなかった。小競り合いを繰り返しては国境の位置が変わる。そんなことが長年続いていた。
 シルバキア国は他国との本格的な戦争の準備も進めていたこともありエタキアとの停戦同盟を結んだ。アデリーナがメルキオに嫁いだのはそういう背景のもとにあった。
 エタニアにとってもこの同盟は西の隣国リンデアへ侵攻するに必要なものだったのだが、国王オルギウスはシルバニアから嫁いできたアデリーナに冷たい態度をとることが多かった。

 この噂も父王の口から出たものだろうとメルキオは思った。
 国王に対する憤りもあるが、同時に臥せる妃に対してもメルキオは歯がゆさを感じる。
『だからこそ、今が大事な時だというのに』

スポンサーサイト
 ポチっとお願いします→

遊びにきました~。
いつもながら、人物のバックボーンの説明が丁寧で解りやすいです。
また読みに来ますよ~。
では~。

2006.06.12 20:49 URL | バナナチップボーイ #- [ 編集 ]

バナナチップボーイさん、いつもありがとうございます。 
超スローペースの投稿ですが、今後もよろしくお願いします。

2006.06.18 12:23 URL | 武久縞 #- [ 編集 ]













管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://yumenohazama.blog69.fc2.com/tb.php/3-92efa50b

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。