夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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 頭が重く、寝返りをうつと体の節々が悲鳴を上げているように痛む。
 遠くで血に染まった母が倒れていた。 その後ろにやはり血を流している父が立っている。 そこへ行こうと思うのに、体が言う事をきかない。 
「ああ、父上、母上。なぜ私はまだ生きているのですか。 どうして私が生きていて、あなた達が死んでしまったのですか」
 手を伸ばす。 しかし届くはずもない。 暗闇の中で父と母の姿は消えて行った。
「父上! 母上!」
「しっかりしろ、アリア」
目を開けるとエドアルドがアリアの手をとっていた。
「あ…にうえ…?」
「気がついたか」
アリアはベットの上に寝ていた。 あのまま寝てしまったのことを、アリアはやっと思いだした 。頭には布が巻かれてある。
「どうしたんだ? 何があった? 頭の傷は」
エドアルドがアリアに覆いかぶさるように言う。 アリアは身を起こした。
「っつ…」
頭がガンガン鳴っている。 めまいがした。 背中が痛い。
「無理をするな」
エドアルドの後ろにオリシスがいた。 腕組をしてアリアを見下ろしている。
「死んでいるのかと思ったぞ。 まったくおまえときた日には」
「あれくらいで死んでたまるか」
「あれってなんだ?」
「襲われたんだ。 初日にラティアにちょっかい出したやつに」
ぶっきらぼうにアリアが答える。
「なぜ助けを呼ばない。 大声を出せば、誰か気がついてくれただろう?」
エドアルドの言うとおりだ。 しかし…。
「…誰の助けもいらない…」
「なに?」
「助けなんて、いらない!」
アリアは押し殺した声で叫んだ。
 エドアルドは青ざめた顔でアリアを見つめた。
 助けはいらない。 そう、だからアリアは剣を学んだ。 もう、誰にも決して助けを求めないために。 そうだ、アリアの傷は癒えてはいないのだ。 当たり前だ、消えるわけがない。 エドアルドは胸がつぶれる思いがした。
「とにかく手当をさせてくれ。 頭だけじゃないだろう? 顔もずいぶん腫れてきている」
エドアルドの優しい声に、アリアもコクンと頷いた。
 しかし、顔や手足ぐらいならともかく、腹や背はエドアルドにもどうにもならない。
「シモーナにやらせよう」
まだ部屋にいたオリシスが言った。
「おまえ、アリアが女だってばれるだろう。 なに考えてるんだよ」
「お主の女の手当なんてごめんだ。 お主が怪我したときにやってもらえ」
アリアの機嫌は最低値を示している。
「なんだ、おまえ妬いてんのか? はっはー、そうか、いい男ってのも罪だよな」
ニヤけたオリシスの顔面にまくらが命中した。
「バカも休み休み言え。 お主、遊びすぎて頭がおかしくなったんじゃないのか?」
「頭も体も至って健康。 冗談言ったわけじゃないぜ。 シモーナなら大丈夫だ。な んか誤解してるようだが、あれはおれが使っている人間だ」
「使っている?」
エドアルドとアリアが同時に言った。
「そ。 正確に言えば、おれんちが育てた人間、ってことかな」

 ワイナー家は領地で生産したワインを北国に輸出し、羊毛を仕入れてエタニアで売っている。 諸侯や諸外国の情勢は、貿易をしている者にとっては命綱だ。 その情報を集めるために優秀な者を子供の頃から教育し、ワイナー家に使えさせているのだと言う。
「それくらいやらなければ、国のために無料奉仕なんかできるかよ」
とオリシスは言う。
 ワイナー家やバルツァ家のような大貴族はもちろん、カルマール家のような小貴族でも劇場や道路といった公共事業を請け負う。 戦争になれば戦費も負担する。 もちろんこれらに見合う利権の確保といったおまけが付くが、負ければただ働きである。
「シモーナはそんな情報を集める人間の一人なわけ。 逆にニセの情報を流すこともある」
だからこういう場所に潜入させているのだとオリシスは言った。
「集めているのはワイナー家の情報だけか? おまえ、他に何をやってる」
エドアルドはオリシスの瞳を探った。が、
「おまえら、本当ににおれのこと遊んでると思ってるな。 まったく友達がいがないぜ。 おまえらに協力するって言っただろ」
オリシスの言い方は、信じる方が馬鹿をみるような感じに聞こえる。だが、今までもオリシスはそうだった。 そしてそんなオリシスをエドアルド達は信頼していた。  
「何を集めたかは、エドアルド、おまえが一人で歩き回って集めた情報を公開すれば、こっちもそっくり教える。 一人よりは二人、二人よりは三人のほうがいいに決まっている。 一人で動けるほど小さい仕事じゃないはずだ。 だが、まずはアリアの手当てからだ」
 オリシスは一旦部屋を出て、シモーナを呼びに行った。
「兄上、どう思う?」
二人になったアリアは、心配そうにエドアルドに言った。
「あいつを引き込んだときからこうなる予感はしていた。 そうだな、オリシスより先におまえに話しておいたほうがよかったかもな」
オリシスはアリアを気遣ってああ言ったのかもしれないと、エドアルドは思った。

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