夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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鏡姫王(かがみのひめぎみ)は、大王の住まう宮に上がっていた。鏡神社で清いはらった大王の鏡をまた宮に飾られた祭殿に据える儀式のためである。祝詞をあげて榊で四方を清め、御酒をささげ、一連の儀式が終わった。
「ご苦労でしたね」
大王宝皇女は鏡をねぎらい、甘湯でもてなした。
「叔父上、鏡王の具合はどう?」
「顔色もよく、時には庭を散策するまでになりましてございます」
鏡は深々と頭を下げた。長く透き通った黒髪がさらりと床にこぼれた。
「それはよかったこと。顔をお上げなさい、鏡。顔をよく見せて」
顔を上げた鏡は、大王の座のあたりに視線をとめた。
宝皇女の妹、三上姫の娘である鏡だが、面差しは母親より父親に似ていた。
「相変わらず抜けるような白さだこと。その白肌ならば化粧も必要あるまいが、そなたも年頃。紅でもさしたら宮中の殿方がほおっておかぬでしょうに」
「わたくしは神に仕える身でございます。生涯が神と共にあることを願います」
宝皇女はため息をついた。表情の乏しい人形のような鏡が本心を言っているのか、宝皇女にはわからなかった。
「そなたはまだ自分が何をしたいのかわからないだけ。もし願いがあったときは、遠慮なく申しなさい。よいように取り計いましょう」
「いいえ、そのようなことは」
「そなたの母も好きなひとのところへ嫁いだのですよ。早くから自分の人生を決めつけることもないでしょう」
神に仕える巫女は独身を貫かなければならない。その中でも代々皇女から選ばれる神事の全てを司る伊勢の斎宮は、死ぬまで伊勢から出ることを許されないほど厳しい。宮中の神事を行う鏡も同じような立場である。しかも鏡にはほかの巫女にはない霊力が備わっている。簡単に巫女を辞すことは許されない。宝皇女はそれを許すと言うのである。
しかし鏡には宝皇女の言葉が何を意味しているのかわからなかった。言葉自体はわかるが、どうしてそのようなことを言うのかがわからなかった。
『ここにいて神事に努めるのが自分の道だというのに』
「わたくしは神の声を聞いているときが一番心安らかなのです。大王のおそばにいつまでもお仕えさせていただきとうございます」
巫女として完璧な答であったが、意識したわけではい。鏡はただ思うままに答えただけであった。
宝皇女はまたため息をついた。

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