夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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 店のカウンターに座り、アリアはワインを少しずつ飲んでいた。
 エドアルドは2時間程前に「リカルド」という男を捜しにきた男を「人違いだ」と帰したあと、外に出たまま帰らない。 書面にかかれていた接触方法だった。 
 店は賑やかさを増し、男達のざわめきと女達の笑い声がホールを埋め尽くす。 今まで経験した事の無い雰囲気の中で、身の置きどころが掴めないアリアである。
「用心棒ったってなぁ…」
何をするわけでもなく、ただこの喧噪を眺めているだけである。落ちつかない。
 ふと、きつい香水がアリアの鼻を刺した。
「子供のくせにワインなんて飲んじゃって、ずいぶんませてるじゃないの」
 振り向くと、あの黒髪の女がすぐ後ろに立っいた。 顎を上げ、些か高飛車な態度でこちらを見おろしている。 盛り上がった胸、くびれた胴、引き締まった腰。 ドレスの上からでもその体が見える様だ。 昼間は下ろしていた豊かな黒い髪は、今は高く結い上げられている。 くっきりと弧を描く眉、小振りだが高い鼻梁、赤く官能的な唇、そして黒いまつげに縁どられた黒い瞳。 圧倒的な美を見せつけるかのようだ。
 アリアは何も言わずに女を見て、そしてワインに視線を戻した。
「なによ。 口が聞けないわけでもあるまいし」
カウンターに肘を付き、女はアリアの隣になった。
「あんた、いくつよ」
「いいだろう、何歳だって」
「かわいくないわね」
「かわいいって言われても、うれしいがる歳じゃないからな」
 いきなり女がアリアの器を奪い、半分になっていたワインをぐっと一気にあおった。
「まずい。 なによこれ。 香りがとんじゃっているじゃない」
女はワインの追加を頼んだ。
「おい、こっちは自腹切っているんだぞ。 勝手な事するなよ」
「おごりよ。 あたしの。かわいい用心棒にね」
素焼きの器のひとつをアリアの前に置き、もうひとつを自ら持ち上げて、女が言った。
「それはどうも」
さっきはかわいくないと言ったくせに、とアリアは不機嫌に器をとる。
「あたしはラティア。 あんたは?」
「…アーリアン」
「いい名前じゃない。 しばらくここにいんの?」
「さてね」
これは本当だ。 先の事など全くわからない。
 しかしラティアは口の端を引き締め、眉を曇らせた。 その表情は色香に似合わず幼さを感じさせた。
『?』
 この自分よりひとつふたつ年上に見えるラティアは、もしかするともっと若いのかもしれないとアリアは思った。 いや、それよりも、その表情の理由が気にもなったが。
「ラティア! いつまでも金にならないやつの相手をしてんじゃないよ。お客がお呼びだよ」
女主人の声に、ラティアは「はいはい」と気の無い返事をして、テーブルの方へ移って行った。
 化粧をし、ドレスをまとった女主人は昼間とは別人のようだ。 若い頃はさぞかしもてただろう容貌を備えている。 贅肉はあるものの、かえってそれが妙な色気を感じさせる。女は幾つになっても化けるものだ、と変にアリアは感心した。 

 ガタンと椅子を蹴飛ばすような音がして、次にラティアの声が響いた。
「やめてよ! 何すんのよ!」
 振り向くと、ラティアが労務者風の男に向かって罵声を浴びせている。 どうやらテーブルについたラティアをめぐっての諍いらしい。 おれが先に…、とかなんとか聞こえる。 男は顔を真っ赤にしながらラティアの腕をつかんで離さない。 ラティアの相手をしていたテーブルの男は、逃げ腰のていで話にもならないようだ。
 廻りのざわめきは一斉にラティアのテーブルに向いた。 だが誰も何もしようとはしない。
 男は抵抗をやめないラティアの頬をひっぱたき、担いで無理矢理二階に上がろうとしていた。
 アリアは女主人を見る。女主人はアリアの視線を感じると、無言で頷いた。それを合図にアリアは立ち上がって男の後を追い、階段の四、五段の所で男のベルトに手をかけた。

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