夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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 ラースローはふと振り返った。
「どうした」
 アリアがラースローの見た方向へ目をやった。
「いや」
 霧が立ちこめ始めていた。その中で、ラースローはティスナの歌声を聴いたような気がした。
 ティスナはこの世から消えたのだ。ラースローは自分の運命も、そう遠くない内に同じ経路をたどることを予想した。いつまでも逃亡が続くわけがない。やはりアリアをどこかで追いやるべきだったか。
 どこへ行く訳でもなく、アリアとラースローは馬を進めていた。
 緩やかな丘が幾重にも重なっている。林が所々に続く大地であった。
 そのひとつの丘を差して、ラースローは言った。
「クレメンテだ」
 遠くの丘の林の向こうに、教会の尖塔が見えた。アリアはラースローから目を離し、その尖塔を目を凝らして見た。霧が深くなればどこにあるのかもわからないような、古くひっそりとした建物であった。
「あれがクレメンテの神学校か」
 門外不出の知識を守り継ぐためだけの場。中で何が行われているのか、誰が、何人いるのか、連れて来られた少年達の事など、知る者はいない。
 ラースローの手綱を持つ手は白く、震えていた。表情は冷めてはいるが…。
『あまりいい思い出はなさそうだな』
でなければ、あのオレアルについて行く訳がない。
 ふいにアリアは言った。
「復讐する気はないか」
 ラースローは突飛なことを言い出すアリアを見た。
「どうやって。焼き討ちでもするのか、たった二人で」
「まさか。焼いたところでまた別の場所に移るだけだ」
「では、どうする」
 アリアの目は尖塔を見据えていた。が、ラースローに向き直って言った。
「秘密を秘密で無くせばいい。他が知るようになれば、知識を守る必要がなくなる。クレメンテは自然に消滅するさ」
 ラースローはしばらく呆気にとられてアリアを見つめていた。が、急に高く笑い始めた。腹の底からの笑い声だった。
「何がおかしい。真面目だぞ、私は」
 自分の笑いにむせながらラースローは聞いた。
「それを知った奴らがわたしたちを追ってきたらどうする」
 だがアリアは明るく自信に満ちた声でこう言った。
「その時は私がお主を守ってやる」
 ラースローはすとんと心が軽くなるのを感じた。
 まったくこいつには驚かされる。かなわない、とラースローは思った。
 知識や術が自分のような人間に使われる事があるかもしれないし、クレメンテの人間がアリアの剣に負けるとは思えない。しかしこいつは秘密を漏らせという。自分が守るからと。
 無茶だとラースローは思った。だが、アリアとならやれそうな気がした。
「いつまで笑っている」
「笑ってなどいない」
「口が笑っている。私は何かおかしい事を言ったか」
「いや」
「おかしくもないのに笑うのか、面白い性格だな」
 アリアに言われたくはない。ラースローはまた笑った。
「そうと決まれば長居は無用だ。行こう」
 ラースローとアリアの影は、霧の丘を越え、見えなくなった。
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どうも。たった今読み終わりました~

登場人物たちの感情がしっかりと表れていて叙情的ですね。
という感想を持ちました。

これからも頑張ってくださーい


PS
このブログとFumingのブログのリンクを張ってもいいでしょうか?

2007.03.06 06:33 URL | FUMING #fNC2qBvU [ 編集 ]

全て読んで下さったのですか?

ありがとうございます。感激しました。
あと少しで終りますので良ければ続きも読んで下さい。

2007.03.06 12:35 URL | 武久縞 #- [ 編集 ]













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