夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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 昼間はけだるい雰囲気のこの店で、アリアもエドアルドも所在なさげにあたりを見回していた。
 一見居酒屋のようだが、二階につながる階段がやけに幅広い。階段の先にも何かありそうだ。
 まだ化粧もしていない女主人がオリシスのとなりから、エドアルド兄妹を品定めするように視線を這わす。
「この柔そうなふたりが…?」
ぼそぼそとオリシスに耳打ちする。
「腕は確かだぜ。なんたっておれと互角なんだからな」
 オリシスは腕組をしながら答える。
 ここはどういう所なんだ、というアリアの問いに、エドアルドがそっと
「たぶん娼館だ」
と言った。
「!」
アリアは声も出ない様子でオリシスと女主人を見た。
「お前さんと互角っていうのは、あの若いのかい? だったらそっちの子どもはどうなのさ」
そういう声が聞こえて、アリアは内心むっとする。
 ここへ来る前、アリアはオリシスに言われたのだ。

「お前の名前を考えなきゃいけないな」
「名前って、何の?」
「男で通す気なら、『アリア』はまずいだろう? 歳だって19にしちゃ髭も生えてないんじゃカッコがつかない」
 言い当てられて、アリアは言葉も出ない。 髭の事など考えもしなかった。
「だいたいお前は童顔だし細身だ。 子供といってもだれも不思議には思わん」
「お主は見た目より老けて見えるからな」
かろうじてそんな事を言うと
「年くって見えるのは男の甲斐性ってもんだ」
などと言い返すオリシスはとてつもなく憎らしく思える。
「じゃあ、私はいったい幾つに見えるというのだ」
「せいぜい14,5歳ってところだな。 声だってかわっちゃいない。 いいところだろう」
 ぐっと答えにつまる。 何も言えないとアリアは思う。
「アリステアなんてどうだ?」
オリシスがニヤニヤしながら言った。
「いやだ。そんな貴族みたいな名前」
アリアがプイとそっぽを向く。
「…貴族みたいったって…。お前、もともと貴族だろう」
あきれ顔でオリシスが呟く。
「アーリアン…」
エドアルドの声にアリアが振り向く。
「アーリアンのほうが間違いが少なくて済むぞ」
エドアルドが笑う。
「うん」
アリアも照れながら頷いた。
「ちぇ。 アリアはエドの言う事なら素直に聞くんだな」
「当たり前だ。ふざけた事しか言わないくせに」
「お前が信用してないだけだろ」
「信用されるようなことをしたら、私だって素直になる」
 とアリアは言うがそれは半分嘘だった。ふざけた事を言ってても、オリシスは信頼出来る。 それはアリアも充分承知している。 素直になれないのはそれが理由ではないからだった。
「じゃ、ま、アーリアンでいこうか」
 オリシスはそう言って、この娼館にやってきたのだ。

「多少腕は落ちるが、こいつもなかなかいける質だぜ。身が軽いから使いっぱでもなんでも使いみちはあるだろう。そこがホレ、お姐さんの腕の見せどころってもんさ。何人もの若いのまとめるなんて、そうそう出来るもんじゃないと思うぜ」
 オリシスの歯の浮くような台詞にまんまと乗ったのか、あるいは仕方無いと思ってはいるものの、他の娘達の手前にもうひとつ口実がほしかったためか、とにかく女主人は渋々ながら承知した。
「まぁいいだろうよ。 使えなかったらその場で追い出すよ」
「もちろん。ま、そんな心配はないと思うがね。こいつらが職と住まいを見つけるまででいいんだ。 そんなに手間は取らせない。おれが保証するよ」
「あんたの保証ってのが一番当てにならないんだよ。こないだのツケ、まだ払って貰ってないよ」
ゼイ肉だらけのウエストに手をあてて片手を差し出す女主人の様子に、エドアルドはぷっと吹きだした。 しかしアリアの方は、オリシスの『ツケ』に気を取られる。 ここの女主人に顔が利くと言う事は、ここの常連ということだ。
 差し出された手を無視して、
「商談成立。お前ら、当分ここで過ごすのも悪くないよな」
オリシスはエドアルド達に向かって言った。
「悪くはない、な」
エドアルドがアリアに同意を求める。
 エドアルドにしてみればなかなかいい場所ではある。人が絶えず訪れ、女がいる限り男が出入りするのは当然だ。よそ者が住み着く事さえ日常的な事だった。たいがいそういう者はここの用心棒として居座っている。その手の者はごろつきがほとんどだが、そういった手合いを嫌う店も有るわけで、ここもそういう数少ないひとつなのであろう。
 問題はアリアだ。アリアにとってはどうだろうか。
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