夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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 ミストール夫人はいつものように侍女たちがティスナの朝の支度をするのを待っていた。今朝も朝早くから国王の拝謁を願う臣たちが詰めている。会うか会わないかはティスナの判断で決められている。会わないとなれば、代わりに侍従が対応することになっていた。
 それにしても…。
 とミストール夫人は不審げにティスナの部屋の方を見た。支度が遅い。毎日の陛下の看病で疲れが出たのだろうか。陛下の風邪はそれほど悪いのだろうか。用がない限り、ティスナは国王の部屋から出ることはない。それにあの宮廷に寄りつかなかったラースローが毎日国王の様子を診ている。ティスナにしてもラースローにしても表情はいつも通りで、そこからは何にも測ることはできなかった。
 ミストール夫人は初めからティスナに仕えていた。南方の貴族の娘が国王の側室にあがった。田舎の育ちなので、宮廷での作法を教えてやってほしいと、国王直々の命令だった。後ろだてになるはずの貴族は領主を亡くしたあとは絶えて久しい。もし国王に万が一のことがあったら、ティスナの身はこの上もなく危険にさらされるだろう。ミストール夫人とて、ここ数年のメルキオ殿下との不仲とその意味を知らないわけではなかった。だからといって自分に何ができるだろう。することと言えば、いつもの通りにティスナに仕え、雑事をこなすしかない。
 派手好きで気ままに振る舞うティスナの献身的な看病は、ミストール夫人にとって意外なものに感じたが、ご自身の身を考えれば当然の行為であるようにも思われた。
それにしても……遅すぎる。とミストール夫人が立ち上がりかけたところに、侍女たちが青い顔をして駆け寄ってきた。
「何事です」
侍女達は慌てて説明をするが、肝心なことが伝わらない。どこにもいないとか、探しているとか。
「はっきり申しなさい。一体誰が居ないのですか」
「ティスナ様のお姿が」
 ミストール夫人は早足でティスナの部屋へ向かった。両手で扉を押し開く。
「ティスナ様!」
そこにも青ざめた侍女がひとりたたずんでいた。
「お支度に伺い、声を掛けてもお返事はありませんでした。しばらく待ってもう一度声を掛けても、やはりお返事はなく、ためらった後にお部屋にあがりましたが、」
 姿はなく、庭に散歩に出たのだろうと庭を捜してもティスナの姿はなかった。侍女たちは手分けをして宮の中を捜しまわったが、どこにもティスナはいなかったのだと、侍女達は口々に言った。
「国王のお部屋は」
 ミストール夫人が侍女のひとりに詰問した。
「ですが、あそこは…」
侍女が勝手に入ることが出来る場所ではなかった。
 ミストール夫人は侍女達を後に、国王の寝室に向かった。ミストールにしても勝手に入ることが出来る場所ではなかった。
「ミストール夫人」
 呼び止められて、彼女は足を止めた。
「何かありましたか。取り次ぎを頼んだ侍女の様子がおかしいので」
 こんな時に。とミストールは眉をひそめた。ティスナが会うのをいい事に、連日通いつめているサリエルであった。何の用かはわからないが、ティスナとこの武人が会うのをミストールは快く思ってはいなかった。陛下がご病気である今、ティスナに不名誉な噂が立つのをおそれていた。
「大変です!」
 また侍女が駈けてきた。何という事だ。これではなにかあったと、この武人に知らせているようなものではないか。侍女達の躾をもっと考えねば。怒りを露にしてミストールは侍女を睨んだ。
「騒々しい、静かになさい!」
「キアヌ様のお姿も」
 怒鳴られてもこれだけは言わなくてはというていで侍女が言った。
 サリエルにはそれだけで充分だった。
「失礼」
 サリエルは部下を引き連れて国王の部屋に急いだ。ミストール夫人も後を追う。
 サリエルは思った。キアヌ王子もということは、他にも誰か居なくなったと言う事だ。それはティスナ以外にありえなかった。
 国王の寝室の扉の前でサリエルは一旦止まった。扉の両側にいる警護兵には何も言わず、扉の奥に向かって、低く大きな声で
「ごめんつかまつります」
と言うが早いか、扉を開いた。警護の兵は唖然とサリエルの行動を見ていたが、続くサリエルの部下やミストール夫人を見ると、慌てて制止しようと中に入った。
「バルツァのサリエルでございます」
朝が来ているというのに部屋は暗く、奥の天幕はさらに暗かった。暗い中に体を横たえている影が見えた。
「陛下!」
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