夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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 ティスナの言葉を真に受け、サリエルは翌日また律儀に宮を訪れた。しかし、国王は風邪を召したと言われ、やむなく退出するしかなかった。
「サリエル様。どうしてもっと強行にでないのですか」
 腹心の部下がこそりと訴える。サリエルは黙ったままだ。
 サリエルに同行したエドアルドは、そんなやりとりを聞いていない振りをしながら、宮の中を伺っていた。サリエルの考えはわからない。今日連れてこられた意味も不明だった。しかし宮の中にラティアの姿を見つけられたら、それだけで大きな収穫となる。
「カルマール殿、如何した」
 広間や庭に目を走らせていたエドアルドはサリエルへ向き直った。
「いえ、物珍しいものでつい」
「それにしても寒すぎますな、ここは」
 サリエルの部下がむき出しにしている腕をさする。
「サリエル殿の領地は南のほうでしたか」
 エドアルドの問いに、ええ、とサリエルが答えた。
「美しいところだ。夏は暑いが冬は過ごし易い」
「こことは反対ですね」
「落ちついたら領地へ招待しよう。花々が咲く頃、人々は陽気に歌い、この世の楽園となる」

数日通いつめたサリエルは、ようやくティスナに呼ばれた。
「陛下のお風邪はしつこくて、なかなか起きあがる事ができません」
「無理はなさらぬ方がよいでしょう。朝晩の冷え込みはこことくに激しい」
 庭を歩きながらティスナは頷いた。ティスナの侍女達とサリエルの部下は、それぞれ距離をおいて二人を見守っている。だが会話が聞こえる距離ではなかった。
「ティスナ様もお体には充分お気をつけになりますよう」
 またティスナは頷いた。
「何かわたくしに出来る事がございますか」
 サリエルの言葉にティスナは歩みを止めた。
「あなたの望みは…」
「サリエル殿。何を申されます。わたくしはただ陛下のご回復を願うばかりですのに」
「では率直に申し上げましょう。何故、陛下の病状をお隠しになられます」
 ティスナの目が一瞬だけサリエルに向いた。
「陛下はお風邪を召したのだと申しましたでしょう? 何も隠してはおりません」
「何故呪詛を」
「わたくしは何も知りません」
「それほどまでにしてキアヌ様を王位につかせたいのですか」
 サリエルの問いはティスナの答を全く無視していた。軽くかわされればかわされるほど、サリエルはそれが問いに対する答えと思った。
「王位などに興味はありません。それに…」
「それに」
「キアヌには王たるものの資格はありません。…それはサリエル殿が一番知っているはずではありませんか」
 震えた語尾が、ティスナの本心だと伝えていた。
「やはり、そうでしたか…」
『やはりまだこの方は忘れてはいないのだ』とサリエルは音の無いため息をついた。
 国王の寵を受け、誰もが羨む生活を地位を得ているのに、それはこの人にはなんの価値もないものだったのだ。この十五年の歳月をこの人はひとりで戦っていたのだ。
「いま一度申し上げます。わたくしに出来る事は」
 ティスナは顔を上げて遠くを見つめたまま言った。
「あなたは、あなたの役目を全うなさいませ」
 侍女を引き連れて去っていくティスナを、サリエルは片膝を折って見送った。
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ほとんど一月ぶりなのですね。
そろそろ、話がわからなくなってきました。間を空けたせいなのでしょうが。
以前一九の作品をそうしていただいたように、この「夢のはざま」という物語を印刷して読んでみたいと思います。

2007.02.02 21:40 URL | 一九 #- [ 編集 ]

ほとんど週末作家となっている武久です。
平日の夜はほとんど次の作品の予習復習に費やしています。

印刷までして読んで頂けるのはうれしいものなのですね。紙の無駄にならなければいいのですが。

今度CSチャンネルの時代劇専門番組で原作の「風の隼人」が3月に再放送という情報を得て、スカパー!に加入すべきかどうか…。

2007.02.04 16:57 URL | 武久縞 #- [ 編集 ]

第5章まで印刷させて頂きました。
いかに自分が物語を把握していなかったのかを思い知らされました。どうも、人物の名前を覚えるのが苦手です。或いは自分が名前にこだわる理由はそれなのかな、とも思いました。

各人物の格好が思い返され、イラストに起こしてみたい衝動に駆られてきました。

2007.02.08 00:58 URL | 一九 #- [ 編集 ]

イラスト、お時間があったら是非お願いしたいです。
私は名前の付け方がけっこういい加減なので(←本当の話)
似通った名前になったりしてますよね。

気楽に読んでくだされば、武久も嬉しいです。

2007.02.10 12:41 URL | 武久縞 #- [ 編集 ]













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