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夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

「さすが、というべきか。それくらいはわかって当然というべきか。まあだいたいそんなところだな」
オリシスはもう一度階下を見て、付け加えた。
「オレアルが別室に移ったようだ。 別室に誰がいるか、知っているか?」
知るわけがない。
「ルジーナ家、レンドル家、トリアーノ家…」
名を上げるオリシス。 
「国王派と呼ばれる面々だ。 好戦派とも言う。 王太子派はコーリウス家を筆頭に…」
オリシスの上げる名を、エドアルドもアリアも無言で聞いた。 
「国王派は目先の利益だけしか考えない頭の固い連中だ。 今や戦争をして領土を広げる時代ではない。 外交の重要性をまるきり理解できないから、メルキオ殿下のやり方に不満を持っている。 西の海洋国家を見ろよ、あの国のことはエドアルドもよく知っているだろう。 あの領土と人口で生き残っていられるのは何より経済の安定と他国の情報収集に長けているからだ」
 エドアルドは1,2年に一度の割合で、その国の石弓傭兵として貿易船に乗る。 傭兵といっても自分の荷も積み込み、個人貿易もできる仕組みだが、エドアルドはそうやって現金収入を得ていた。
 オリシスの話ぶりではオリシス自身は王太子派と思える。 だがエドアルドはあえて聞いた。
「ワイナー家とバルツァ家の名が上がっていなかったが」
2家ともエタニアの古い家で、特にバルツァはエタニア一の武門の家柄だ。
「国王派と言いたいところだね。 ただうちの親父もサリエルもどこにも接触はしていないようだ」
「バルツァ家の当主と親しいのか?」
オリシスはエドアルドの問いに応えるのに、一瞬間があいた。
「特別親しいわけではない。 宮廷ぎらいという点では気が合うが」
エドアルドはそれ以上何も聞かなかったが、オリシスが「そろそろ行くか」と席を立っても気が付かなかった。 アリアがオリシスの後を追う
「兄上!」
まだ席にいるエドアルドを振り返ってアリアが呼んだ。エドアルドは腰を上げた。決して軽い腰ではなかったが、立ち上がらなければ何も始まりはしない、そんな足どりで。

「いいのか? そのまま出てきて」
 アリアが先を行くオリシスに言った。
 結局あの店での勘定を払わずに出てきたのだ。 店の者も何も言わずに見送っていたが。
「かまわん。あそこの店主は昔うちの料理人だったんだ。 店の資金も家の親父が出してやったようなもんだからな」
だからといってなにもただ喰いすることはないだろうとアリアは思う。
『それにそうと知っていれば、もっと味わってたべたのに…』
 まったくこの放蕩息子は…。 と心の中で毒づくが、自分達にとって助かっているのは確かだ。
 先に馬を進めるオリシスの後をアリアとエドアルドが追う。
「どこに行くつもりだ?」
アリアが聞いてもオリシスは
「いいからついてこい。しばらくはタニアにいるつもりなんだろう?」
 アリアはエドアルドを見る。
 エドアルドは何か考え事をしてるのか、先ほどから一言も口をきかない。
「あまり目立った行動はしたくないぞ。 私たちは追放されてるんだからな」
しかたなしにアリアが答える。
「くだらんこと気にするな」
「くだらんこととはなんだ」
「おれ達を見てだれが貴族と思う? どこをどう見たって薄ぎたない放浪者だろ。幸いお前達は何年もタニアには現れてはいない。 素性などばれようがない」
オリシスの言う事ももっともだが、
「薄ぎたないのはお主だけだ。私たちはただの旅人と言ってくれ」
とアリアは言う。
「似たようなもんだろうが」
「……お主、一度自分の姿をキチンと把握した方がいいぞ」
アリアはため息まじりに首を振った。
そこへ、エドアルドが口を開いた。
「オリシス。宿を探してくれ。 あまり金がかからず干渉されにくいところがいい」
 エドアルドの要望は当たり前のものであったが、あまり理にかなっているとはいいがたかった。 宿泊代の安いところはたいてい小さな宿であり、宿は小さければ小さいほど好奇の目がはびこっている。 しかしオリシスは小さく笑って言った。
「そこに今から行こうと思ってたんだ。 ま、多少の難はあるがな」
オリシスの多少はあてにならない。 どちらかというと多の方が圧倒的に多いのだ。
 不審な目を向けるアリア。 しかし、今はそれに従うしかなかった。

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