夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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 ラースローには全く理解できなかった。
 いつも通りの生活だった。 ナミルへ行く前と変わらないいつも通りの生活。
 変わった事と言えば、自分が北宮に毎日出仕することと、アリアが姿を見せない事だった。
 朝起きると今日こそはアリアが出て行ったのではないかと思う。 しかし食堂に下りると温かい食事の支度が出来ている。 部屋で薬の調合をしていても、気が付くと書室に薬湯茶が煎れてある。 出仕の間に部屋が整えられており、シーツも衣類も洗濯してある。 用事はアリアを呼ぶ前に全て整えられていた。
 なのに、気配は感じるのにアリアの姿を見る事はない。 ただ、夜中、井戸の水をかぶる背中を見るだけだった。
 ラースローはその姿を見る度に胸がつかえるのを覚える。 なぜあんな事をしてしまったのか。 いや、なぜアリアは出ても行かず、自分を殺す事もなくここに居続けるのだろう。 この結果はラースローにはまったく不可解な事だった。
 いっそ北宮に泊まり込んだ方が、あの背中を見ずに済む。
 しかしそれでは国王オルギウスの容態を悟られる危険がある。 周囲に国王の容態を知られないようにするには、昼間、いつも通りにティスナが北宮を取り仕切る必要があり、ラースローが泊まり込むような、いつも通りではない事があってはならないのである。 それがティスナとの間に出来た暗黙の役割だった。
 だが、これにいったいなんの意味があるのだろうか。 国王が奇跡的に目を覚ますのをただ待つのか? 
「無意味なことだ」
 ラースローは自分が独り言を言ったことに気がつき、自嘲した。
 
 アリアは使用人室でベットに座ったまま夜を過ごしていた。 窓の外の月明かりを見る。 裏の林の上に欠けていく月が出ている。 体が重たい。 痩せていく体を抱きしめる。
 シモーナは言った。 自分が甘えていると。 だが、今度こそはオリシスには会えないような気がした。 戦えなかった。 そして同じ結果を生む。
 オリシスは助かっただろうか。 エドアルドは…。
 気に病んでみるが全てがどうでもいいことのようにも思えた。 そんな風に思う自分が情けなく、疎ましかった。
 今自分が生きているのは、生きる事が自分に課せられた罰だからだ。 死はいつも魅惑的だった。 どれほど自分の死を願ったことか。 だけどいつも自分だけが生き残る。
 アリアは膝を抱えた。 自分のために母や父が死に、兄が苦しんでいるというのに、全ての元凶が自分だというのに、まだ自分は死なずに生きている。 おぞましい自分を消し去る事が出来たら、どんなに楽だろう。 何の楽しみもなく、何の希望もなく、生きていることに何の意味があるだろう。
 何の希望もなく…。 しかし望みはあった。 それは自分の死だった。 ならばその望みを捨てよう。 唯一の望みを捨てる事で、アリアは自分の罪を償おうと思ったのだ。 生きる事の苦痛を一生背負って生きて行くのだ。
 裏返せばそれは自分が生きるための理由をこじつけるているのかも知れない。 生きるに値しない己の価値を、この世につなぎ止めておく屁理屈を、ただこねているだけなのかも知れない。 本当に死を願うならそうなったはずだ。 だが自分は、喉が乾けば水を飲むし、腹がへればパンを食べる。 眠くなればちゃんと眠るし、敵がくれば剣も抜く。
 本当は一体、何を望んでいるのか。 何も望まないと言いながら、何かを望んでいる。
「私はきっと誰よりも卑怯で卑しい人間なんだ」
 アリアはそう呟いた。
 そう、望んでいた。 オリシスと共にあることを。 しかし、もう気力がついて行かない。

 ふっと眠りかけた瞬間、アリアは物音に飛び起きた。
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 暗い森の中に自分は居た。 見上げても見えるのは枝を張った高い木々ばかり。 なぜこんな所にひとりでいるのだろう。
 アリアは自分がどこへ行こうとしているのか、何をしようとしているのか思いだそうとしていた。
『ああ、そうか』
 今日は父と兄が戻ってくるのだ。 一年ぶりだ。 父の隊を迎える準備をしている屋敷を抜け出して、アリアは森の小道を走っていた。 この近道を抜けて街道に出れば、真っ先に父に会える。 そして父の後ろに乗って一緒にカンタリアの街に入り、領民に出迎えてもらうのだ。
 ふと、アリアは自分と同じように歩く足音を聞いた。 次第にそれは自分に近づいてくる。 気の迷いと思っていたが、はっきりと気配を感じて心が焦った。 音はすぐ後ろまで来ていた。 アリアは走りだした。 走っているのに足が言う事をきかない。 重くてもつれて、次の一歩を踏み出すのにこれほど力をいれているのに、足はまったく言う事をきかなくなっていた。 見ると自分の足は腿の付け根から溶けて消えていた。 地べたに這い蹲って、今度は手で地面を蹴るように音から逃げた。 規則正しい音なのに飲み込まれそうで、必死に手を動かした。 草を握り、土に立てた爪が割れ、懸命に動かす手も言うことを効かなくなっていく。 もう一度振り返ると、黒い影が見えた。 恐怖が体を突き抜けた。 逃げなければ。
 髪を掴まれた。 服を手を掴む複数の腕。 それでも手を動かして自分を掴む腕ごと引きずるように這った。
 顔を上げると白いものが目に入った。 淡い栗色の髪がひろがる。 白いドレスを着た母がいた。
「母上」
 助けを求める。
「母上ー!」
 手が滑った。 なにかぬめりとしたものに手をついたのだ。 見るとアリアの手は赤く濡れていた。 母の方から自分へと押し寄せてくる赤いものは…。 母の白いドレスが瞬く間に赤く染めあがっていった。
 自分を掴む腕の先に黒い影の顔があった。
「あ…」
 顔は次第に変貌し、胡桃色の髪と灰味がかった薄茶色の瞳をもつ端正なものに変わった。
「ああ」
 ラースローの冷たい眼差し。 孤独な…深い闇。
「あ──────っ!」

 アリアは自分の叫び声に目を覚ました。 本当に声を上げたのか、それとも声のない叫びだったのかわからない。 気が付くと 全身に汗をかいて半身を起こしていた。 ベットのシーツも湿っている。 アリアは自分の腕を抱いた。 まだ上下して息をしている肩を静めるためでも、あの夢を見た恐怖を落ちつかせるためでもあった。 しかし、こうやって目が覚めた以上、二度と安らかな眠りが訪れない事も知っていた。
 膝を引き寄せて体を出来るだけ丸くした。 目をつむりたくなかった。 あの夢の残像を見たくはなかった。
 外は白みはじめ、自分が寝ていたのはほんの数時間だったとわかる。 あのあとどうやって自分の部屋まで来たのか覚えがない。
 アリアはふらついた足取りで部屋を出て、外の井戸で水を汲み、頭からかぶった。 何度も何度も。
 なぜ自分がまだここにいるのかわからない。 なぜオリシスの元へ急ごうとしないのだろう。 シモーナが自分の命も省みずにここに来たと言うのに、何をぐずぐずとしているのだ。
 いつまでも水をかぶるアリアの背後に、屋敷の廊下からアリアを見おろすラースローの姿があった。

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 ナミル山の入り口には兵士が駐屯していた。 木の影に隠れて、エドアルドはその様子を窺った。 話に聞いているより兵士の数が多いようだ。オリシスたちの事があったからだろうか。 そうなるとますますオリシス達の安否が心配だ。
 エドアルドは馬に戻り、街道を引き返した。 途中、騎士の一団とすれ違った。 思わず顔を下げて通り過ぎようとする。 髪はまた黒く染め直したが顔を知られていないとは限らない。 タニアでの一件もある。
「おい」
 呼び止められて、エドアルドは馬を止めた。
「どこの者だ」
「私は、どこにも仕えておりません」
「では、馬を下りて道をあけるのが礼儀だろう。 こちらはな」
 そういう若い騎士を主人らしき者が制した。
「失礼した。 どちらから参られた」
 身分の高そうな相手をちらりと見て、エドアルドは狼狽した。 バルツァ家のサリエルだ。 父カルマールとは旧知の仲であった男。 格はバルツァ家の方が数段由緒があるが、エルネスト・カルマールとは共に幾度も戦いをくぐり抜けた戦友。 エドアルドも何度か会った事がある。
「コーツウェルから」
 帽子を目深に直してエドアルドが短く答えた。
「あちらはどんな様子かな。 お若いの」
 なんと答えて良いものか迷ったが。
「短い滞在でしたが、その間に事件がありました。 北の宮に賊が入ったとか」
「なぬ?」
 騎士達はお互いに顔を見合わせた。
「それで、陛下は」
「そこまでは存じません」
 汗が滴り落ちる。
「引き留めて悪かった」
 通り過ぎていく一団を背中で見送りながら、ほっとエドアルドは吐息を漏らした。 ナミルの警護にあたっている兵士達はサリエルの部下達だったのか。 オレアルはどうしたのだろう。 ラースローは。成功したのなら、あそこまで物々しい警護が必要だろうか。 サリエルまでが出てきたとは。

「あの者、怪しいですな、サリエル様」
「ほおっておけ」
「しかし、腰につけた剣は騎士階級が持つものと見受けました」
 サリエルはエドアルドを覚えていた。8年前の事件からすっかりカルマール家とは縁遠くなっていたが、エドアルドが自分を覚えていないはずはない。 オリシスと共に行動していたなら自分やカルロス・モドリッチのことも知っているはずだ。 なのに身分を明かさなかった。 サリエルは北宮の事件とエドアルドをつなげた。 エドアルドはナミル襲撃に加わってはいないのだろう。 サリエルは自分より先にエドアルドがオリシスを見つけることを、望んだ。

エドアルドはオリシスの取ったであろう行動を考えた。
 オリシスとシモーナ。 たった二人だけでナミルの警護を突破し、呪詛の行われる場所まで進むだろうか。 いや、だれか他に正面ではないルートを知っている者がいるはずだ。 オリシスはきっとその者を使って山腹まで進んだにちがいない。 しかし二人では余計な体力を使う余裕はない。
 ふとナミルの東にある小さな集落を思いだした。 彼らは農耕地を持たない狩猟民族だ。 狩をして皮を売り、木を切って炭に加工してそれで糧を得ている集落。 もちろんそれは聖域ナミル内での禁猟だ。 それ故人を寄せ付けない集落でもあるが、オリシスなら彼らを難なく使える術を知っているだろう。
 エドアルドは馬を走らせてその集落に急いだ。
「またですか?」
集落は街道から山へ分け行ったところにあった。いちばん近い小屋でエドアルドはある男を探していると聞いたのだ。用心深そうな中年の猟師が、面倒くさそうに答えた。
「またとは」
「さっきも来たんでさ。お偉い役人のような人たちがね」
 サリエル達だ。彼もオリシスを探しているのか。いや追っているのかも知れない。何度も人探しにくることを、この村ではもう怪しんでいる。
『だが、まてよ』 
二番手に来た事を利用できるかも知れない。
「それで、なんと答えた」
「そんなやつは知りやせんってね」
そっぽを向く猟師の男。
「それは残念だな。他をあたるか。 惜しい事をしたな、もし知っていれば…」
思わせぶりな言葉尻に男がこちらを向いた。
「何だ。何かあるんすかい」
内心ニヤリと笑いながらもエドアルドは馬に跨る。
「いや、いい。邪魔したな」
自分達がかくまっている男が値打ちのある人物だと思わせるのに、充分すぎる効果があったようだ。猟師は立ち上がってエドアルドを引き留めた。
「あんたの探しているのは男だけですかい?」
その言葉でオリシスを知っている事は間違いがなさそうだ。シモーナは…、シモーナもここに来ているはず。もしオリシスが足止めを食うような怪我をしているのだとすれば、シモーナは助けを呼びに行くだろう。一か八か。
「一緒にいた女がおれの所に助けを請いに来た。探しているのはひとりだけだ」
 男はしばらく考え込んでいたが、もうひとつエドアルドに聞いた。
「もしだよ、もしそいつを知っていると言ったら、あんた、なにくれるつもりで」
「一生遊んで暮らせるだけの金をやる」
貧しい者を買収する時の常套文句だった。男は歩きだした。
「こちらでさ。案内しますって」
山腹まで息が切れるくらいの山道を昇った。二、三時間も昇っているだろうか。馬は集落に置いてきたが。
 小さい炭小屋が見えてきた。猟師は戸を二回、三回と叩く。しばらくして中からまた別の中年の男が出てきた。
「さ、」
エドアルドは促されるままに小屋に入った。手は腰に、剣をいつでも抜き出せる体勢をとる。
みすぼらしいベットには、上半身裸でうつ伏せになっている男の背があった。肩からわき腹にかけて何か白っぽい泥のようなものが塗られており、右肩には薬草が巻かれていた。
「オリシス」
呼びかけても返事はない。
「死んでいるんではないだろうな」
「い、生きてますさ。まだはっきりしないだけで。生かしておいたら金をくれるって約束ですぜ」男を無視してエドアルドはベットに歩み寄った。微かだが、息をしている。
「金は今は持っていない。無事に山を下りられたら渡してやる。動けるまでおれもここに世話になるぞ」
「そんな。もうここも危ないんですぜ。ここの警備が増えて。見つかるのも時間の問題だ」
「だが動かせる状態じゃないだろう」
しかし猟師達の言うとおり、ここに居るのも危険だ。どうしたものかエドアルドは迷った。それにしてもシモーナはどうしたのだろう。
 オリシスが小さくうめき声を上げ、細目をあけた。
「オリシス、聞こえるか。おれだ」
「エ…」
エドアルドは胸をなで下ろした。意識はある。ならば助かる見込みはある。
「しばらくだ。もうしばらくここに居させてくれ。薬草をもっと頼む」
 そしてエドアルドは猟師の持っているこの数日間の情報を求めた。
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 屋敷の中に移した自分の部屋で、アリアは身支度を整えた。 台所で食料と水を皮袋につめ、居間を横切る。 あとは小屋に隠したままの大剣を取って、そのまま馬屋に行けばいい。
「どこへ行く」
 その声に、瞬時にアリアは振り向いた。
 部屋の暗がりにラースローが立っていた。 いつ帰ってきたのだ。 物音はしなかった。 いや、気が付かなかった。 旅装のアリアはただラースローを見つめた。
「出かけるには随分遅いな。 いや早いと言っておこうか」
 窓から差し込む月明かりの中にラースローは一歩踏み出した。
「わたしの証拠でも見つかったか」
 月明かりの中のラースローは、青白く冷たい微笑みを口元に浮かべていた。
「初めから知っていた。 あのカルマールの娘であることぐらい」
 体が凍りついたかのように、アリアは動けないでいた。
 知っていた? 初めから? ではなぜ手元に残した。 頭の中が白く染まっていく感覚をアリアは覚えた。 それでもラースローから視線を外らす事が出来なかった。 冷たく笑っていても、ラースローはこの世の者とは思えないほど美しいとアリアは思った。 冷たく笑う時ほど、ラースローの感情が激しいことも。
「父親の仇が目の前にいるのに、何もせずに出ていくのか。 おまえの父親に対する愛情とは、その程度のものなのか」
 また一歩ラースローは踏み出した。
「どうした。 わたしが憎くないのか」
「なにを…、いって…」
 喉が乾いて声になったかどうかわからなかった。 父カルマールはやはりこの男に殺されたのか。 だがそれは仇を討つことからかけ離れた出来事のようにアリアには感じられた。
「証拠がなければ本心も口に出せないか。 いくらでもくれてやる。 呪詛の方法もティスナとオレアルの陰謀も。 さあ、わたしを殺すがいい。 そして証拠を持ってどこへでも行けっ」
 アリアの足元に、隠してあった剣が投げ出された。 剣とラースローを交互に見る。 ラースローの顔が苦痛にゆがむのを見て、アリアは落ちつきを取り戻した。
 殺せとこの男は言う。 自分を屋敷に残したのは、このためだったのかもしれない。 哀れな…。
 アリアは剣を拾い上げると鞘のベルトを自分の腰に巻いた。
「私にお主は殺せない。 父の仇だとしても、お主は利用されただけだ」
 なぜ今ラースローが呪詛も何もかも投げだそうとしているのか疑問だったが、それよりもオリシスが心配だった。
 呪詛の方法を知り、ナミルで討てなかったラースローを殺す。 それほど時間がかかる事ではない。 いや、一石二鳥というものだ。 しかしラースローに対する殺意はアリアの中のどこを探しても見あたらなかった。
 出て行こうとするアリアの腕をラースローが掴んだ。
「哀れみをかけるのか、このわたしに!」
 この細身の体のどこにこんな力があるのかと思うほど、腕を掴む手は強かった。 アリアが腕をひねっても振り解けなかった。 ラースローは冷静さをかなぐり捨てていた。
「どうしても殺せないというなら…、ならば殺意を抱かせてやる──!」
 さらに腕を掴む手がこもった。 アリアは目を見張り、このあとに起こるべきを予感した。 逃げろと心の中の自分が叫ぶ。

 逃げろ。 でなければ剣を抜け! 

 だがアリアの体はあの時の恐怖に捕らえられ、指先ひとつ動かすことが出来なかった。


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 書室の奥の小部屋でアリアはあらゆる書物、あらゆる品を手に取って確かめた。 机の中も棚も。 床に隠し倉庫がありはしないか、天井裏は…。 しかし手がかりになるようなものはなかった。
 ラースローはこのことを見越して、呪詛に関する物を出かける前に全て処分してしまったのではないだろうか。 だとしたら、もはやここにいるのは無意味だ。 …しかし…。
 アリアの耳に馬の嘶きのような声が聞こえた。 ラースローか。 慌てて台所に戻る。 裏口から外に出ると、馬小屋の近くに一頭の馬がいた。 かなり疲れているのか、吐く息が激しくぐったりとしている。
 もう夜半。 辺りは月明かりで見えないことはない。 用心して馬の方へ近づく。 背に人影が見えた。
「誰だ」
 影はゆっくり馬の首から体を起こした。
「!」
 影は崩れるように馬から落ちた。 駆け寄るアリア。 馬に蹴られないように人物を引っ張りあげ、抱きかかえるようにして小屋に連れた。
「今なにか飲物を」
 そういうアリアを手で止めた。
「シモーナ…」
 蝋燭をつけ、改めてシモーナの顔を見る。 蝋燭の灯でもシモーナの顔が蒼白になっているのがわかる。
「怪我をしているんだな。 傷を見せてくれ」
 シモーナはそれをも拒んだ。
「…時間、時間があり、ません」
 苦しい息の中、シモーナが言った。
「失敗したのか。オリシスは」
「けがを負っています…。あまり…」
 時間が無いという事は、オリシスのことだろうか。 としたら、かなりの怪我なのだ。 それにしてもなぜシモーナがここに。 はやる気持ちを押さえてアリアは辛抱強く続きを待った。
 シモーナはナミルでラースローの討ち取りが失敗したこと、アリアのことがオレアルに知れたこと、オリシスが怪我をして意識が無いこと、ラースローらがコースウェルからの早馬で北宮に戻っているだろうことを簡単にアリアに告げた。 ナミルが失敗したこともラースローが帰っていることも気になったが、それよりオリシスの怪我の具合だ。
「オリシスを置いてきたのか。 なぜ。 シモーナが付いてなければいったい誰が…」
 シモーナはアリアを悲しく見上げた。
「わたくしでは駄目なのです。 アリア様、わたくしでは…」
「シモーナ?」
「オリシス様の元へ、お願いです。 オリシス様はうわごとであなたの名を」
「私の?」
「あの方はあなたを求めておいでです」
「…まさか」
 シモーナがアリアの袖をぎゅっと掴んだ。 掴んだ手が震えている。
「まさか、だって、オリシスは侯爵家の跡取りだ。 そんな」
 そんな事があるわけない。 確かに自分は願った。 だが、所詮夢だ。 どうしたって結ばれるわけがない。 自分は爵位を剥奪された家の、しかも過去に傷をもつ人間だ。 今は身を隠して仇討ちをしなければならない身であるというのに。 だから期待もなにもしなかった。 友として扱ってくれるだけで充分だった。
「あなた方を宮廷で認めて貰うために、オリシス様は…。 それでもだめならあの方は爵位を捨てる気でいるのです。 なぜわかって差し上げないのです。 あの方はずっと、ずっとアリア様だけを見ておられた。 アリア様と共にあることが、あの方の望みだと言うのに。 そのために事を成功させようとしているのに」
 シモーナの目から涙がこぼれた。
「わたくしがわかるのに、どうして、どうしてあなたがおわかりにならないのです」
「シモーナ…」
「わたくしはあなたが羨ましくて、そして憎かった。 わたくしはあの方の為なら、命もいらない。 なのに、あなたは過去の小さな傷にこだわって、人々の行為に甘えている」
 シモーナの言葉はアリアの胸をえぐった。 人に頼るのはいやだった。 だからひとりで生きられるように剣を学んだ。 しかしそうやって人を隔てる行為が、かえって人に余計な気遣いをさせていたのではないだろうか。 エドアルドにしてもオリシスにしても、いつも気遣うように自分のそばに居てくれた。 知っていながら、自分は気づかない振りをしていたのだ。 これはシモーナが言うとおり甘えでしかない。
「なぜ諦めてしまう。 なぜ手に入れようとしないんだ」
 オリシスが言った言葉が蘇った。 手に入れててもいいのだろうか、この自分が。 いや、この意気地のなさをシモーナは言っているのだ。
「シモーナ、場所はどこだ」
 アリアはシモーナを抱き起こした。 手にべったりとした感触があった。
『ひどい。こんな体で…』
「ナミルの東の山腹に、小さな炭小屋があります」
「わかった。 だけど、行く前に傷の手当をさせてくれ。 なにか、飲むか?」
 エドアルドがその場所をわかればいいが。
 アリアは屋敷の台所に行って、布と水をもって小屋に戻った。 が、シモーナの姿は消えていた。
「シモーナ」
 あの傷とあの様子では…。 外には馬もなかった。 馬も相当疲れていた。 遠くまで走る事はできない。
「く…っ」
 アリアは布を握りしめた。
 探しには行けない。 それを彼女は望んではいない。 早くナミルへ行ってくれという、彼女の最後の願いなのだ。

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 ラースローとオレアルは旅の疲れを拭う間もなく国王の部屋に通された。
 昼間だと言うのにカーテンを閉め切った部屋は薄暗く、天幕を下ろしたベットの脇にティスナが腰掛けていた。
 ティスナはラースローの姿を見ると、立ち上がって向き直った。 やつれた面差しのまなざしの中に、緊張の色が秘められているのをラースローは見た。
「突然倒れました。 それからずっと目を覚まさない。 これはなんという病なのです」
 ラースローは埃だらけの上着を脱ぐとベットに近寄り、一礼をしてオルギウスの様子を診た。 脈も呼吸も通常より低い数値だ。
「詳しく話して下さい。 いつ、どういう状況で倒れられたのか。 その時の様子など」
 ラースローの声は低く落ちついてはいるものの、内心に広がる暗い闇をティスナもオレアルも拭う事はできなかった。

 国王の部屋から退出したラースローは、柱に片腕をついて顔を埋めた。 片方の腕は拳を握り震えている。
「…っ」
 全身が疲れきっていた。 呪詛は体力を使う。 そして休みなく馬を走らせコースウェルに戻ってきたのだ。 その結果がこれとは…。
「ラースロー。 正直なところどうなんだ。 その…陛下の容態は…」
 オレアルが背中から問いかける。
 ラースローは眉をしかめ、柱から身を離して歩き始めた。
「おい」
 オレアルも後を追う。 用意された一室でラースローは衣服を脱ぎ捨て、顔を洗い、手足を拭った。 クロゼットの中の衣服を選び、上等な絹のシャツを羽織る。 ポットから茶を注ぎ、自分だけ飲んだ。 が、顔をしかめて茶器を置く。
「陛下の容態を隠して、誰にも部屋に入らせないのは賢明な処置だった」
 腕を組み、窓の外を眺めながらラースローはオレアルに言った。
「…それは」
「時間の問題だ。 仮に意識が戻ったとしても、もう以前の陛下を望む事はできない。 言語は失われ、半身付随の幽霊として生きて行くだろう」
 このまま目を覚まさないことも有り得る、とラースローは付けたした。
「外部に漏れていないとすれば、時間は稼げるが…」
 そしてラースローは黙った。 外部に漏らさないためには、誰かがオルギウスに付いていなければならない。 主治医は信用できず、ティスナひとりでは持たない。 自分がここに残らなくてはならないのだ。 それは時間が稼げたとしても事が成せないという事にもつながる。 意味のないことだ。
 ラースローは奥歯を噛みしめた。 この時に。 あと一歩という時に! 何が間違ったのだ。どこで! 
 ティスナは立て直そうとしているが、今からでは他の臣をあつめるのは難しい。 オレアルでさえ保身を考えているものを。 メルキオへの呪詛を行うとしても、今までの子供相手とは訳がちがう。 相手の精神力に打ち勝つにはそれなりの準備が必要なのだ。 呪詛が早いか国王が死ぬのが早いか、結果は目に見えている。いずれにせよ公爵家拝領はもはや無いに等しい。
 ラースローは感情に任せて茶器をテーブルから払い落とした。
 オレアルは事の重要さに驚きながらも、頭を回転させていた。 なんとかしなければならない。 このままティスナに荷担するか、若しくは…。 オレアルの頭の中にワイナー侯の倅、オリシスの言葉が蘇った。
「おれと組まないか」。
 ラースローを残して、オレアルは部屋を出た。
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 ラティアは宮の異変に感づいていた。 宮の警備はあれからひどく物々しくなったし、侍女達の緊張も伝わってくる。 だがそれだけではない。 疲れで休んでいるという国王の部屋に閉じ込もってるティスナだ。 誰も部屋には入れず、ティスナも姿を現さない。 そうなるとラティアの仕事は無いにも等しかった。
 ラティアは息詰まる侍女部屋から抜け出し、ふらりと中庭に出た。 エドアルドの事が頭から離れない。 無事だろうか。 逃げ切れただろうか。 宮の様子ではまだ賊は捕らえていないようだった。
「ラティア」
 呼ばれてラティアは振り返った。 キアヌだった。 またひとりでいる、とラティアは思った。
「どうなさいました?」
 キアヌの暗い表情。 あのショックから立ち直れないのも無理はない。
「どうしたらいいのかわからないんだ」
 キアヌがか細い声で呟いた。
「ぼく…」
「心配する事はありません。 陛下もじきによくなります」
 うつ向いたキアヌは首を振った。
「キアヌ様?」
「みんなあの夜の賊を探している。 お父さまは病んで伏せっている。ぼくはあの時の…」
 キアヌの言わんとしている事がわかった。
「王子は見たままのことを言えばいいのです」
 キアヌが顔を上げた。 泣き出しそうな表情。
「でも、言ったらラティアは」
 賊はラティアの名を呼んだ。 知り合いだった。 それを言えばラティアは…。
「王子が困る事はないの。 王子がそうしても、あたしは王子の事を恨まない。 キアヌ様。 するべき事をするのが王子の役目です」
「友達を裏切っても?」
「裏切りではないわ。 王子が正しいと思ったなら」
「どれが正しいかわからない。 ぼくはラティアが好きだし、責められるとわかってて言うことは出来ない」
 ラティアは笑った。 王子は自分を友達だと言ってくれる。
「大丈夫。 あたしはあたしなりのやり方で自分を貫くわ。 でもそれはきっと王子に対する裏切りになるわね」
 キアヌは涙を溜めて唇を噛みしめた。
「ちがう。ちがう…」
 大粒の涙がキアヌの足元を濡らした。
「ぼくがラティアのことを言っても、ラティアは答える気はないんだね」
「そうよ」
「お父さまは、賊を捕らえたらただじゃ済まさないって言っていた。 ラティア、殺されるよ」
「自分を貫けられたらそれで満足よ。 あたし、その人に命を助けられたことがあるの。 今度はあたしが助ける番。 人生おあいこになるようになってるのよ」
 ラティアが目線をキアヌにあわせ、やさしく微笑んでいる時、背後の回廊を数人の騎士があわただしく通り抜けていた。

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 猟師の待つ山腹までどうたどり着いたのか、シモーナにも覚えてはいなかった。 意識が無くなりかけているオリシスはそのまま倒れ込んだ。
「安全な場所まで運んで」
 肩で息を切らしながら、シモーナも目眩を覚えた。 いや、今ここで倒れるわけにはいかない。 猟師は炭小屋に使っているという、山中の小さな小屋にオリシスを運んだ。
「水と薬草、それから布がいるわ。集めて」
 二人の姿に先ほどから一言も声を発せず、猟師は黙って小屋から出て行った。
 シモーナは震える手でオリシスのシャツを切り裂いた。 背中の傷は出血の割には大した事がない。 問題は肩だ。 だいぶ化膿している。 背中の出血が体力を弱めている。 剣先を炎であぶり、傷を開いて膿を出す。 意識を無くしている分幸いだ。 もう一度剣先を焼いてから、今度は傷口にあてる。 これで熱が治まれば、なんとかなるかもしれない。 しかしもはや手遅れかもしれないのだ。 祈る気持ちでシモーナはオリシスの汗を拭いた。
「ア……。ア…」
 うわごとのようにオリシスが呟いた。 最初は聞き取れなかったが、繰り返したときシモーナはそれが誰の名であるか解った。 オリシスの正体がオレアルに知られた。 ということはアリアの事も知れたということだ。 そのラースローとオレアルは早馬でナミルを出た。 おそらくコーツウェルの北宮に向かったのだろう。 オリシスはアリアの名を、アリアの無事をうわごとで言っているのだ。 おれは死なぬとオリシスは言った。 それは自分にではなく、アリアに対しての言葉だったのだ。
 シモーナは立ち上がった。 猟師が布と薬草を持って戻ってきた。
「傷の手当はできる?」
「あ、ああ。 そりゃもう」
「ではこの方を死なせないで。 一生遊んで暮らせるだけのお金をあげるわ」
 小屋を出ていく背中に猟師は声を掛けた。
「あんたも怪我をしているじゃねーか。 どこに行く」
「助けを呼んでくるわ」
「その傷じゃあ…、あんたも手当をしたほうが」
「そんな時間はないの」
 猟師の声を振り切って、シモーナは闇の中へ姿を消した。
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 戸棚から這い出したエドアルドは、アリアに背を向け、窓を見た。
 おとついの晩に突然エドアルドが来たとき、アリアは何かがあったと直感していた。 だが、エドアルドは何も言わずアリアの部屋にこもったままだったのだ。
「賊が入ったと言っていた。 兄上の仕業か」
 答えず窓を外を伺うエドアルド。
「騎士達のあの様子では、ティスナとキアヌを討ち取る事はできなかったのだな」
 エドアルドは騎士達が遠ざかるのを見ていた。
「なぜ早まった事を。 いつも慎重に物事を運ぶ兄上だったではないか。 私には無茶をするなと言っておきながら、自分の方こそ無茶をする」
「必要があったからだ。無茶ではない」
「オリシスはシモーナとたった二人でラースローを追った」
「!」
「本来なら、それが兄上のするべきことではなかったのか」
「オリシスは国王派だ! おれたちを欺いていたんだぞ」
 アリアはエドアルドに目を見開いた。
「あいつは全てを知っていながら、おれやおまえや父を駒のように動かしていたんだ」
 苦々しげに言葉を吐くエドアルドをアリアはじっと見た。 そうだろう。 オリシスは全てを知っていたのだろう。 そうでなくて、どうしてあれほどの動きが出来ただろう。 アリアはようやく納得できた。 国王派という一点を除いて。
「だから何だと言う。 駒のように動かしていたかどうかはわかららないが、オリシスは私たちのために今も走り回っているぞ」
「もともとはあいつが発端だ。 あいつが宮中の争いにおれたちを巻き込み、父上も殿下を陥れるために捨て石にしたんだ。 あいつがおれたちをこんな目に合わせる」
「いまさら!」
 アリアが声をはりあげた。 アリアはエドアルドの瞳に後悔と後ろめたさが混ざった色を見た。 声を落としてアリアは続けた。
「兄上…。 兄上は本当はわかっているはずだ。 オリシスが国王派でないことぐらい。 今までの流れを見れば、オリシスが国王派と言う方が不自然だろう。 あのオリシスのことだ、国王派と見せかけて、その実メルキオ殿下派に与していることぐらい、ありそうなことだ。 兄上だってそう思っているんだろう」
 エドアルドの瞳が揺れた。
「巻き込まれたも何も、起こってしまった事ではないか。 ならば行くべき道を進むしかない。 オリシスが絡んでいたにしろどのみち殿下は父上に命を下した。 父上ほどあの役にふさわしい人物がいるだろうか。 オリシスはきっとどうせなら自分が共に、と思ったんだ。 考えても見てくれ。 オリシスは私たちに不誠実だったか? 確かにわからない部分は多い。 でもオリシスはいつも私たちに最善の方向を示してくれたではないか。 私たちが立ち向かうのはオリシスではない。 この状況を切り抜けるには、この仕事を全うするしかないのではないか」
 エドアルドはアリアの真剣な眼差しに吸い込まれた。 今まで妹がこんなにはっきりと自分の意見を言ったことがあっただろうか。 オリシスひいきに言っているのではない。 アリアはアリアなりにこの状況を把握し打破しようとしているのだ。 それに引き替え自分はどうだ。
 ドアルドは自分の中にあったオリシスへの嫉妬を認めた。 オリシスに比べて何も持っていない自分を卑屈に思いたくないばかりに、他の者の口車に乗り、オリシスが自分たちを裏切っていると信じようとした。 自分ひとりでも仇が討てると意地を張った。
「兄上!」
 そう、今は落ち込んでいる暇はない。 アリアの言うとおり、自分にすべき事はある。
「ナミルだな」
 エドアルドが言った。 間に合うだろうか。
「おまえもここを出ろ。 一緒に行くんだ。 すでにナミルを襲っているとしたら、ここも危険だ」
 アリアは首を横に振った。
「アリア?」
「私はここでまだやることがある。 呪詛の証拠を掴まなくてはならない。 万が一ナミルも失敗したとなったら、オリシスや兄上や殿下のおかれる状況は極めて危ういものになる。 確実な証拠を手にいれなければ」
「アリア」
「ラースローがいなくなってから、書室本を片端から調べた。のこるはこの部屋の一角だけだ。 兄上、私は私の役目を果たす」
 エドアルドがアリアの 肩を抱いた。 細いこの肩で妹は自分の人生を掴み取ろうとしている。いとおしい妹だった。 幸せになって貰いたい、誰よりも。
「もしラースローを討ち損じた場合、おまえの立場は危険だ。 ラースローが戻る前にここを抜け出せ。 いいな」
 コクンとアリアが頷いた。
「今から発つ」
 アリアが慌てて台所から水と食料を詰めた包みを用意する。 小屋に繋いだ馬を林の方へ引いて行き、まわりの農家の死角からエドアルドは走った。

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 騎士階級らしい貴族とその兵士達が敷地内に入ってきた。 アリアは急いで屋敷の外へ出た。
「怪しい者を見かけなかったか」
 騎士が馬上から問いかける。
「いいえ、ここへは誰も。 なにかあったのですか」
「主人はどうした」
「一週間ほど前から出かけています」
「他には誰かいないのか」
 自分の他にはここにはいないとアリアが告げると、馬上の騎士は背後の者と何かを話していた。
「ここはこのとおり見晴らしのいい土地です。 誰か来ればすぐにわかります。ああ、私よりも土地の人間の方がよそ者には敏感ですよ」
「念のため、屋敷内をあらためる」
 兵士達が屋敷の部屋という部屋を捜索しているあいだ、アリアは騎士達に居間で茶を煎れた。
「あの、何があったのでしょうか」
アリアはもう一度聞いた。
「北宮に賊があったのだ。 おまえひとりなら、ここも用心した方がいい」
「野盗ですか? どこに、被害は? 我が主人は大丈夫でしょうか」
「ラースローか」
「しばらく姿は見ぬな」
「おおかたまたどこかの貴夫人のところで楽しんでいるのさ」
「いや、貴夫人に限らないぞ」
 騎士達の下卑た笑いがアリアの耳には不快だった。
 公爵アルマーシ家の跡継ぎと申請はしているものの、ラースローはまだ貴族ではない。 それなのにコーツウェルで大貴族並みに屋敷を陛下から賜ったことに対するやっかみが多いとオリシスから聞いてはいた。が、あからさまにこういう面当てをされると、自分が言われているようで、アリアは気分が悪くなるのを感じた。 ラースローだったらあの美しい冷淡な顔で受け流すのだろうが、今なら分かる。 冷淡な表情であればあるほどその仮面の下で激しい怒りを燃やしていたことを。
「この屋敷に使用人ひとりとは、意外に質素な暮らしをしているんだな」
 騎士達がアリアの心配をよそに屋敷の中を見ている。
「あの奥の部屋はなんだ」
 ひとりが書斎の奥の扉を指して言った。
「ラースロー様の執務室です」
「見せて貰おう」
「あ、でも」
「なにか不都合でもあるのか」
「主人に叱られます。 私も許しがなければ入れません」
「ならばますます見ない訳にはいかないな」
 扉を開けた騎士達は、その部屋の内部に呆然とした。
「なんだ、これは」
 棚に並べられた得体の知れない瓶詰めや部屋にこもる臭気に、騎士達は吐き気を催し、数秒で部屋を閉めていた。
「ラースローはあの部屋でいつも何をしている」
「はあ、薬の調合とか、してるみたいです」
「ろくに出仕もしないで、変人のようだと思っていたが、本当に変人だったんだな」
 笑い声がおこった。アリアはむっとした。
「屋敷には特に異常ありません」
 報告しに来た兵士を合図に、騎士達は引き上げていった。
 アリアはそれを見届けてから書斎の奥の、先ほど騎士達が二の足を踏んだ部屋に向かった。
「兄上」
「行ったか」
 観音開きの戸棚の下段から、エドアルドが這いだし、膝の埃を払って立ち上がった。

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長く本編「夢のはざま」をお休みさせて頂きました。

私事の諸事情によるものです。

まあ、同居猫が原因不明の下半身麻痺になったり、資格試験勉強だったり、でもって試験中時間を間違えてパニくったり、おまけに法事が毎週のように…。おまけのおまけで忘年会が毎日のように…(←ウソです)

えー、コホン。
楽しみにしてくださっている皆様(いるのかしら)も、そうでない方も、これから「夢のはざま」は佳境に入っていきます。どうか、最後までおつきあいください。

武久縞
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続きまして、【漢字編】です。

正直に申し上げますと、漢字は非常に苦手です。
漢字を好き嫌いで見たことはないので、上手く回答できるかどうか…。
何しろ、私の本名は万葉仮名で構成されていて、その漢字自体に意味などない名前なものですから。

●好きな漢字を三つ

北 小学校2年生の書取りの時、「バランスが良い」と
褒められたことがあったので。

縞 私、武久縞の一字です。
  ただ単にストライプとかボーダー柄が好きなだけです。
  深い意味はありません。

和 一九さんから頂いた、私をイメージする漢字です。
  聖徳太子のかの有名な言葉「和を以て貴ぶ」の和ですね。
  いつか自分の小説にこの言葉を名前にした「以和貴(いわき)」
  という人物を登場させてみたいと考案中です。

●前の人が1問目で答えた漢字について自分なりのコメントを

偽 ニセもの。まがい物。人の手が加わると…という意味ですか。
  なるほど。
  建物の設計で、本物の木を使いたいところを偽物の木を
  使ったりしています。
  建築物そのものが自然から反したものなのですけどね。

君 「くん」と読めばくだけた関係、もしくは年下の呼び方。
  「きみ」と読めば、我が君とか背の君という自分にとって
  かけがえのない人への尊称。変幻する漢字です。

信 信用が仕事の第一条件。(何かの宣伝みたい)
  でも信頼感がなければ何事もうまく運びません。

●前の人にこれについて答えて!と回された漢字

光 光がなければ人は前に進むことができませんが、
  光が当たる裏側にはいつも影が。
何事も二面性をもつことを意識しています。

義 今の世の中にかけているもの。

絆 だからこそせめて大切にしたいもの。 

●次の人に回す言葉を三つ







●漢字の事をどう思う?

今は極東の共通語ですがもっと世界に広めれば、英語が話せなくとも世界中で筆談は出来るかも。私の密かな野望です。

●最後に貴方の好きな四文字熟語を三つ教えて下さい

弱肉強食
一刀両断
先手必勝

あらら、思いついたものを羅列したら、こんな熟語が…。
今まだ気分的に仕事モードに入っていました。
信頼とかなんとか言っていた私ですが、実態はこんなもんです。

●バトンを回す人7人とその人をイメージする漢字を

これを読んでくださった方に、「幸」あらんことを。


難しいですねー。
私の人生の中で、漢字を考えたことなど無かったように思います。
それが分かっただけでも、自分にとって+プラスだったかも。

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懇意にさせていただいている雪嶺一九さんから
【漢字バトン】 と 私、武久縞 に「和」という漢字をいただきました。

その漢字バトンに入る前に、少しは私自身のことを紹介したほうがいいのでは?と思い、同じく一九さんのところにありました【私生活バトン】を勝手にやってみることにしました。

しばしおつきあいくださいね。


●職業は?

 会社員です。
 という答えを求めているのではないのでしょうね。
 というわけで、もう少し掘り下げた回答を。

 建築意匠設計を生業にしています。
 ここでは小説もどきを書いていますが、ばりばりの理系。技術者です。

●普段何していますか?

 仕事しています。 朝9時から夜11時ぐらいまで。

●休みの日は何していますか?

 仕事がたて込んでいるときは仕事をしています。
 昨日も今日も仕事でした。
 仕事がないときは、掃除洗濯猫の世話、そして小説の更新をしています。

●起きる時間は?
 
 朝6時ごろ

●寝る時間は?
 
 夜中2時ごろ

●一人は好き?

 苦にはならない程度に好きですが、丸一日で飽きます。
 
●朝ご飯は食べる方?

 飲み過ぎた朝でない限り、しっかり食べます。

●家で何をしていることが多い?

 家に居る時間での割合でいえば、寝ていることが多いです。

●お風呂は湯船派?

 湯船につかります。フタの上には本と猫。睡眠に次ぐ至福の時です。

●友達は多い?
 
 さあ、人と数を比べたことはないので何とも言えませんが、
 食べたり飲んだり歌ったり踊ったりする友達は割と多いですね。
 ブログ上では、ごらんの通りです…。

●恋人はいますか?

 永遠を誓った人が約一名。

●自分の家で好きな場所は?

 今の季節はこ・た・つ。

●ぶっちゃけ寂しがり屋?

 寂しいと意識したことがないくらい、おそらく寂しがり屋です。

●お疲れ様です。回す五人を指名してください。

 先ほどにも書いたとおり、ブログでのおつきあいは下手なので…。 
 つまり回す相手がいないということですが。


少しは自己紹介になっているのでしょうか?



 
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