夢のはざま

鏡女王の物語【水鏡】連載中です。

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近くの教会で子ども達に学術を教えながら隠遁していた父が家を出たのは1ヶ月前の事だ。 行き先も目的も告げずにひとりで出かけて行った。無くなっていたのは昔父が愛用していた剣だけだった。 アリアと方々を聞いて廻ったが、父の行方を知る者はとうとう現れなかった。
 それがあの日、いきなり見知らぬ男達がやってきて、父エルネスト・カルマールが死んだと告げた。 官僚らしきその男は、表情も変えずに、父が国王に対して謀反を企てたと言ったのだ。
 何がどうなっているのかすぐには事情が飲み込めなかった。 だが男が父の剣を差し出したとき、その鞘に血がこびり着いているのを見たとき、事実はどうであれ父は存命しないのだと確信した。 さらに男は言った。
「この地はおろか、この先、一歩もタニアおよび近隣領に足を踏み入れてはならぬ」
 首都タニアの近隣の街からの追放だった。 窓の外を見ると、家の廻りを兵士が取り囲んでいた。 男は国王の印字の書面を振りかざした。
 もし本当に父が謀反を企てたのならかなり酌量のある処置だ。 近年の事はわからないが、ひと昔前なら、謀反を起こした者の縁者はひとり残らず処刑されていたはずだ。 そこまでしなければ国王としての権威を守れない時代であった。
 男達は幾人かの兵士とともに、カルマール家の家を捜索し始めた。しかし、徹底したものではないようにも見えた。そんな様子を二人はただ呆然と見つめていた。 すぐに終わった捜索のあと、猶予は三日間と言い残して官僚らは出て行った。 つまり三日経ってもここにいるようなら、殺されるか連行されるかということだ。
 しばらくエドアルドはアリアとその場にたちすくんでいた。 父親が死んだと言うのに、ひどくかけ離れた世界のことのように感じていた。父の亡骸を引き取る事は不可能だ。そのまま風にさらされているのだろうか。それともさらし者にされているのだろうか。だがそれさえもどうでもいいことのように思えた。
 なぜ父はそんな事をしたのか。エドアルドにもアリアにもわからなかった。理由ならひとつだけ思い当たることがあるが、父があの事を盾に今更何かを起こすはずがない。 誰かが何かをそそのかされたのだとしても、決してそんなに軽々しく行動する人間ではない。
『あの頑固な父を動かすほどの人物が父の背後にいるはずだ』
「あ」 
アリアが国王の書面を見て、小さく声を発した。
 エドアルドがアリアを振り返った。アリアが手にしている書面が二枚に分かれている。 いや、もともと二枚あったのだ。 二枚目の書面にはこう書かれていた。

 ~エルネスト・カルマールの死の真相を追い、仇を討つ事ことを望むのであれば、人の目に触れずにタニアに入り、連絡を待つ事。これは極秘事項である~

一回読んだだけでは意味がつかめなかったが、何度も読み返すうちにその文の持つ意味が見えてきた。
 父は失敗したのだ。何らかの使命を。 今度は自分がそれを負うのだ。
「兄上…」
アリアがエドアルドを見つめていた。
自分達はすでに巻き込まれている。 無視する事は出来るが…。
「父の仇を討つ」
エドアルドは低くそう呟いた。
無視をすれば、いずれ何らかの形で自分達も消されるだろう。 ならば事の真実を掴んでやろうではないか。 なにもしないよりは、ずっといい。いや、このままでいいわけがない。
「仇は、討つ」
もう一度呟く声には、強い響きがあった。
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 オリシスはその反応を見てか、それとも全く知らないでか一拍おいて
「という噂だ」
とつけ加えた。
 エドアルドは眉をしかめたまま吐息を漏らし、アリアはまだ肩をこわばらせたままオリシスを見ていた。
「王宮では禁句になってはいるが、エルネスト・カルマール氏の事件は噂の的だ。 誰彼となく顔を突き合わせてはその話で持ちきりときている。 あのまじめだけが取り柄のエルネスト氏が宮廷を去って何年になる? それがいきなり謀反だ。 裏に何かあると思う方が普通だろうが」
オリシスは宮廷に出入りしている。 その辺の情報は確かにエドアルドよりも多いだろう。
「お前はここんところの王宮の情勢を把握しているか?」
オリシスに問われて、エドアルドは答える事が出来なかった。 父の仇を討つ。 裏向きの使命はあるものの、実際の状況は具体的にはわかっていない。 そもそも父がなぜあんな事をしでかしたのかさえまだ理解できてはいないのだ。 だがオリシスがわかっているとも思えない。
「宮廷は今、国王派と王太子派に二分されている。 国王陛下とメルキオ殿下の不仲が原因だ。 お前も知っているだろう? 国王の側妃ティスナ。 あれが王子を生んだのが事の起こりだ。 王妃様が亡くなられてからティスナは陛下の寵愛を一身に受けている。 しかも王妃と異なりかなり機転が利くところが気に入られている。 陛下は高齢。 王子は幼い。 これだけの要因がそろって、次に来るのは?」
オリシスが促す答は軽々しく口に出来るものではない。 だがもし本当にそうなら、父の仇は…。
「…メルキオ殿下の排嫡」
エドアルドは答えた。 もしこれが本当だとしたら、父の仇の行き着く先はティスナ妃、いや、国王ということになる。
 アリアは一言も発しなかったが、事の重大さはよくわかっていた。 青ざめたエドアルドの顔。 兄に課せられた重荷を少しでも肩代わりしてやりたかった。 だが、自分の存在がかえってエドアルドをそこまで思い詰めさせているのだ。 もし自分がいなければ、守るべき相手がいなければエドアルドももっと自由に自分の行く道を選択出来たはずだ。 爵位は8年前に捨てた。 エドアルド自身に爵位に未練があるとは思えない。  あるのは父を失った後の責任感であり、アリアの今後の生きていく上での保証の確保だ。 被保護者の甘えだけでなく、アリアはそう思っていた。
 オリシスは続ける。
「しかしいくら国王と言えど、人望厚いメルキオ殿下を意味もなく排嫡出来る訳がない。 そこでまず殿下のお子達を狙った」
「まさか!」
「ご自身の孫だぞ。 カミーラ様やユーシス様の死因は流行病だと聞いている」
「流行病はもっと田舎で起こっている。 王宮から滅多に外に出ない子供が流行病に倒れて、他の者が何ともないのはどういうことだ? タニアでの死者は10人にも満たないぞ」
「じゃあ、本当の死因は何だったのだ」
アリアの問に、オリシスは首を振った。
「おれの言っていることは、あくまでも噂だ」
「ではお主の意見は…? お主はどう思っているんだ」
オリシスはうつむき加減に二人を見上げた。 目が鋭く光っている。 本当に聞いてしまっていいものかアリアとエドアルドが戸惑うほどだった。 オリシスは言った。
「噂は十中八九当たっていると思う。 暗殺…それも直に手を下さずに死なせる方法、呪詛だ」
 一瞬二人は息を呑んだ。
「…出来るのか、そんな事本当に。 …邪教だろう?」
アリアが言った。
「何でもありだよ、この国は。 おれの名前だって異教の神だぜ。何考えてんだかあの親父は」
オリシスが混ぜ返すのを、エドアルドが話を戻させた。
「話には聞いた事あるが、そうだとしたら」
オリシスも真剣な表情に戻る。
「さらに次のマテオ様が狙われる」
 オリシスの言葉は不気味なほど的を得ているように思われた。
「それなら先にメルキオ殿下を狙えばそれで済む話ではないか。 なにも幼い王子達を」
アリアが声を強くした。 
「先にメルキオ殿下が亡くなれば、二人の王子達を擁立する派と国王の末子キアヌ様を擁立する派、三派に分かれ、事態はもっと泥沼化する。 ここは世継ぎを亡くした殿下の失策を誘うのが最も有効な手だてだと考えられる。 そういうことか? オリシス」
エドアルドはオリシスを見て言った。
 父は布石にされたのだろうか。 誰の? どちらの? 国王が殿下を陥れるためか、殿下が本気で国王に立ち向かったがためにか。  
『だが…』
とエドアルドは首を振る。
『どちらでもいい、今は』
 父の仇は討たねばならぬ。しかし、アリアのためにも、そして自分の為にもこれからの事をも考えなければ、そして最も有利と思える行動をとらなければここで生き抜く事は出来ない。
 オリシスの言う事を信じていないわけではない。むしろ一番真実に近いとは思う。しかしそれに片寄っては判断が鈍ることも有り得るのだ。
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 首都タニアの入り口で一行は足をとめた。 行き交う人々の数は多い。首都になるとこうも人の表情は違うものかと思う。 街のはずれでも明るく活気に満ちている。 田舎の物静かな陽気さとは異なり、もっと表も裏も空元気といった風だ。
 久しぶりに訪れたタニアに、少なくともエドアルドは戸惑った。
『こんなに活気があっただろうか』
「治世がうまくいっているんだな。街がこんなに栄えている」
ぼそりとアリアが言った。
「ここのところ、戦が無いからな」
オリシスが答える。
 家に寄りつかないといっても、オリシスの家敷はタニアの王宮に近い所にある。 領地は南方だが宮廷内に職務をもつワイナー家当主はタニアで暮らす方が多い。 オリシスも生まれも育ちもこのタニアである。 軍の役職についていた頃はカルマール家もそうだった。
「…だが、栄えれば栄える程、貧富の差が激しくなる。 今までの長い戦いで家や田畑を焼かれて食えなくなった農民がタニアに流れ込んできている。 裏通りを見ろ。 危なくてまともに歩く事さえ出来ない有り様だ」
オリシスの言うように、良く見ると物乞いやごろつきも少なくはなかった。
「陛下は知っているのか? この様子を」
オリシスはアリアのこの問には答えなかった。
「アリア。 ここではそんな話は」
エドアルドがアリアを窘めた。 アリアは眉をしかめて口を噤んだ。確かに兄の言う通りだ。どこに何者がいるかわかったものではない。 
「さて、昼飯にしようぜ」
 オリシスが馬から降りて勝手に一軒の料理屋に入って行った。 小さいが一見にして高価だとわかる面構えの店である。 エドアルドとアリアは顔を見合わせ、慌ててオリシスを呼び止める。
「おい待て。 おれ達はいい」
戸口から顔を出してオリシスはいいからと手招きをした。
「オリシス。 ここでそんな贅沢はできないんだ。 先は長い。 少しでも倹約しないと」
「つべこべ言うな」
「お主に奢ってもらう理由はないぞ」
「あいにくおれにそんな甲斐性はない」
威張る事でもないことを堂々と言ってのけながら、オリシスは二人を半ば強引に店のなかに連れ込んだ。
「まずワインをくれ」
席に着くなりオリシスは自分よりもはるかに礼儀正しい給仕に言った。
「おい、」
あきれ顔でエドアルドが言う。
「何事もはじめが肝心」
などとほざきながら素焼きの器で運ばれてきたワインを各自に注ぎ、オリシスは乾杯のまねをしてすぐ口に持っていった。
「あー、うまい。この季節のが一番味がいいな」
わけのわからない事を言いながら、あっと言う間に器を空にするオリシスを残りの二人は黙って見つめた。
 オリシスの頼む料理は、さすが侯爵家の子弟である。がしかしエドアルド達は戸惑うばかりである。 遠慮がちに手を動かす。 料理はうまい。 うまいが、こんな事をしていていいのだろうか。
そんな様子のエドアルドを見ながらオリシスは急にまじめな顔になった。
「エドアルド」
オリシスが無言で突き出す顎の先を、エドアルドは料理を飲み込みながら見おろした。
 そこにはちょうど店に入って来たばかりの紳士と、それを取り囲むような若い男女二人がいた。 紳士の頭にはかなりのはげあがっている。 着ているものは高価なものなのだろうが、そうは見えないほど品がない。 やたらにレースやら金銀装飾が体中にはびこっている。 そばにいる女性は、どうみてもその紳士の情婦という感じだ。 付き添っている男もどこかの子弟のようだが紳士に仕切にへつらっているようだ。 
「派手な一行だな」
エドアルドはオリシスに視線を戻した。
「見ていて気持ちいいものではないぞ。 なんだあのひきがえるみたいなやつは。 それにあの女の香水がここまで臭う。 気色悪い男もいるし」
エドアルドの脇から覗いていたアリアが言った。
「お前も香水のひとつぐらいつけてみろ。 女の気持ちがわかるかも知れない」
「私が女の気持ちがわかったってしょうがないだろう。 それにあんなひきがえるにひっつく気持ちなんて一生わからなくていい」
「おい二人ともいいかげんにしろ。 あれがどうしたんだ、オリシス」
エドアルドの言葉に、そうだそうだと思い出したようにオリシスが言った。
「あの男、見覚えないか」
エドアルドはもう一度彼らを見た。2階の階端からでは席についたひきがえるは背中しか見えない。
「うーん…」
「オレアルだ」
「え?」
「ヤーニス・オレアルだ」
オリシスはもう一度、はっきりと名を上げた。
 エドアルドは思いだした。 オレアルといえば、ただの騎士階級の男で、エドアルドの父エルネストの部下でもあった。 エドアルドの隊とは別だったが、彼の噂は聞いていた。 騎士としては下級であり、補給に廻されては表だってはいないが横領もしていたとか。 その後カルマール親子が軍を退いてからはぷっつり世間の話は聞かなくなったが。
 しかしあのオレアルがなぜあんな派手な格好で街を出歩いているのだ。
「いまや、飛ぶ鳥の勢いの側妃ティスナの覚えめでたき男爵様さ」
「男爵だと?」
 エドアルドとアリアは同時に声を発した。
「あいつは武より口で立つ方面に才能があったようだな」
オリシスはそう言うとぐいっと次のワインを空けた。
「そして今回、エルネスト・カルマール氏を謀反に陥れた首謀者でもある」
さりげなく言ったオリシスの言葉に二人は顔色を変えた。息を呑んで目の前のこの男を見つめる。それは誰も知らないはずだ。少なくとも二人はそう知らされていた。
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 タニア領に入り、そろそろ遙か彼方に城壁が見えてくる頃、街道を避けて入った林の道にエドアルドとアリアはひとつの影を見つけた。
 エドアルドはアリアを振り向き、片手で腰の剣を押さえながら無言でうなずいた。近づくにつれ、その影は次第にはっきりと姿を現していった。 馬を路肩の木に繋ぎ、その木にもたれ掛かり腕を組んでいる男だ。 近くなった双方の距離に、相手が顔を上げた。
「待ってたぜ。 遅かったじゃないか」
「オリシス!」
アリアがエドアルドよりも先に相手の名を呼んだ。
 オリシスはニヤッと笑って、手綱を取った。呆然としてるエドアルドの隣に馬を並べる。
「…何しに来た。なぜこの道がわかった」
緊張気味のエドアルドの声に、オリシスは顔を伏せてクッと小さく笑った。
「勘違いするなよ。 別におれはお前たちをどうこうしようなんて思っちゃいないぜ。 家はまだ継いでないからな。何をしようとおれの自由だ」
「だから何しにきたんだと聞いている」
オリシスは声をたてて笑いながらエドアルドの背中をバンッと叩いた。
「おれも一緒に付いて行ってやるって言ってんだよ。 わからないやつだな」
エドアルドはますます訳がわからなく、オリシスの顔を見た。
 肩まで伸ばした不揃いの黒い髪を無造作にひとまとめに束ね、骨ばった輪郭には不精髭が生えている。 童顔のエドアルドに比べ、不敵に笑うオリシスにはどこか風来坊の感があった。 薄汚れた身なりは、とても侯爵の子弟には見えない。 形のよい眉の下の黒い瞳は、時折鋭い眼光を放つ。 そのせいで街でごろつき達と諍いを起こす事も少なくないのだ。
「冗談言うな。 お前が一緒だとロクな事がない」
エドアルドはそっけなく答えた。だが表情はほころびを押さえているようにも見える。
「水臭いな。 おれとお前の仲じゃないか」
オリシスはかまわず馬を進めた。
「オリシス、わかってるのか? 俺達は遊びに行くんじゃないんだぞ」
「わかってるから一緒に行くって言ってるんだ。 お前らみたいな世間知らず、野盗に喰われるのがおちだぜ。 おれがいると何かと役に立つと思わないか、なぁアリア」
話を振られて、アリアは一瞬ドキリとした。が、表情には出さずに淡泊に言う。
「私に二人の面倒は見切れないぞ。自分の事は自分でするなら、一向にかまわないが」
一拍の沈黙の後、エドアルドとオリシスは声を立てて笑い出した。 笑いを堪えながらひきつった声でオリシスが答えた。
「はいはいかしこまりました。 だがその言葉、忘れるなよ、アリア」
「誰が忘れるか。 自分の身は自分で守る。 お主はせいぜい争いを起こさぬよう心がけることだな」
むっとしているアリアを目の端に捉えながら、オリシスは肩をすくめた。

 エドアルドと同じ歳のオリシスは、古い侯爵家の息子でありながら、ふらりと旅に出ては諸国を巡っている風変わりな男だった。 父親のワイナー候から何度勘当を言い渡されたか、本人にも覚えきれないほどだ。
 彼の剣術の師範がエドアルドの父親であり、オリシスとエドアルドはいわゆる幼なじみという間柄である。 剣の腕は双方互角だが、躊躇いの無い分オリシスの方に分があった。 二人ともエタニアの軍に入り、遠征にも出かけた事がある。
 しかしオリシスは本来の性格の為か、今では役職に就くこともなく、家の手伝いをすることもなくフラフラしている有り様だ。 エドアルド達がタニアから田舎に引きこもっても、オリシスは何かにつけてはよくカルマール家に出入りしていた。 野や山や湖でひとしきり呆けた後、またふらりと出て行ってしまう。 そんな事を繰り返していた。
 真面目で実直なエドアルド。 不真面目で気ままなオリシス。 性格がこうも違うのに、二人は不思議なほど気が合っていた。
 
 オリシスが同行してくれる事は、エドアルドにとってもアリアにとっても心強いものであったが、
先が見えない事だけに侯爵家のオリシスを巻き込みたくはなかった。だが、オリシスは頼まれなくても厄介事に首をつっこむタイプの人間だ。彼がそう言った以上、何を言ってももはや無駄と言うものだ。
 エドアルドは既にオリシスの同行を許していた。
「オリシス、お主もいい加減落ちついたらどうだ。嫁も娶らずに好きな事をやっていては、ワイナー候が気の毒だ」
 オリシスの背にアリアが呟いた。
「そういうセリフはな、まず自分が一人前の家庭を持ってから言うもんだ。それにおれより先にエドアルドがいるだろ」
「もちろん兄上に見合う女性がいたら一も二もなくそうさせるが、そういうことではない。お主はれっきとした侯爵家の跡取りで、という話だ」
「おれはまだ縛られたくはないんだ」
「いつまでも子供みたいなことを言ってる訳にはいかないぞ」
「うるさいぞ、お前」
オリシスはアリアを振り返って睨みつけた。
「凄んで見せても私には痛くも痒くもない」
アリアにツンとすまされると、オリシスは今度はエドアルドに向かって言った。
「おいエドアルド、お前、躾がなってない。なんでこう、もっと素直に育てなかったんだ」
するとエドアルドも
「おれが育てたんじゃない。自ら育つのがカルマール家の家風でな、悪く思うな」
と答える。
「ちぇっ。頑固なところはホント、あのじじいにそっくりだぜ二人とも」
「父上はじじいと呼ばれるほど歳ではなかったぞ」
「わかったわかった、わかりました」
 オリシスのふてくされた声に、エドアルドもアリアも笑った。
 こんな風に笑えるのもオリシスのおかげだ、とエドアルドは思った。たしかにオリシスが同行するのは悪くない。 父の行方がわからなくなってから口数の減ったアリアが、こうして以前のように喋っている。 二人だけの道行ではとてもこういう風にはいかなかっただろう。 負担が軽くなった分、エドアルドは心持ち余裕を持てるかもしれないと感じていた。
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「アリア。 支度はどうだ?」
 小ぢんまりした台所で、テーブルの上に広げた食料や水などを仕分けしていたアリアは、戸口に立つエドアルドを振り返りもせず、黙々と手を動かしていた。
「アリア?」
それでもアリアは答えない。 エドアルドはアリアの正面に回り込んで顔をのぞき込んだ。 が、泣いていないのを確認すると、ほっと息を漏らした。
 アリアは、手際よく干し肉を薄紙に包み皮袋に詰め込んでいる。 小麦粉も二重に袋に入れて口を縛る。  
 こうして徐々に皮袋は膨らんでいった。

「兄上…」
と、突然アリアがボソリと呟いた。 ワインを羊の皮袋に移し換えるのを手伝っていたエドアルドは、沈黙を破ったアリアの声に驚き、危うくワインの壺を落としそうになった。
「ど、どうした?」
「うん…、髪の毛、切った方がいいか?」
 エドアルドはアリアの顔をまじまじと見た。 この状況でこの妹の態度は何なのだろう。 落ち込んでいる訳でもなく、悲しんでいるわけでもなく、かといってもちろん楽しんでいる訳ではないが、淡々と荷造りをしている妹はエドアルドにとって理解しがたいものだった。
 以前から思っていてはいたが、アリアは感情を別の態度で隠してしまう傾向があり、このときもその表れであるようにも思うのだが、しばしば戸惑う事がエドアルドにはあった。
「髪の毛が、どうしたって?」
かろうじて落とさずにすんだワインの壺を抱えてエドアルドはアリアに聞き返した。
「うん、切った方がもっと男らしく見えるかと思ってな」
 アリアは肩胛骨まで伸ばしたる癖のあるの赤い褐色の髪を、皮紐でひとつに束ねている。 素朴なブラウスの上にベージュのベスト、ズボンをはき、長靴を皮紐で結び、外套を羽織っている姿は、何処から見ても若い男にしか見えない。

 これは今、特別にしてる格好ではない。 何年も前からアリアはエドアルドの小さくなった古着を着るようになっていた。 化粧もせずドレスを着る事もなく、洋裁や料理や作法よりもエドアルドと一緒に剣や石弓を持っては野や山に出歩いていた。
 そんな妹の姿を見慣れているエドアルドにとって、今更男に見えるもなにもないのだが、これから旅に出るにあたり、より男に見えた方がいいと思うアリアの気持ちがわからないでもなかった。

「それで髪を短くしたら、男というよりはガキに見えるぞ」
 エドアルドがそう言うと、アリアはこの日初めて兄の顔を上目使いに見上げ、ムッとふくれた。
 今年19歳になるアリアは年の割には細身で、女性特有の丸みがない。 剣で鍛えた体は均整がとれており、まだ成長過程の少年のイメージがある。 濃い眉や切れ長の瞳、薄い唇と引き締まった顎がそれをさらに強調させていた。
 深みのある茶色の瞳に睨まれて、エドアルドはますますその感を否めずにはいられなかった。
「兄上だって、とても25歳には見えぬぞ」
「なんだと?」
 兄妹ということもあり、エドアルドもアリアに似た容姿をしてる。 赤い髪は短く刈ってはいるものの、元来の癖毛であちこちにはねている。 背だけはアリアより20㎝高いが、広い肩幅をのぞいてはアリアと似たりよったりの体格だ。
「ああ、早くしないと夜が明けてしまう」
 アリアは手早く荷造りし終えた。

 夜明け前にこの家を出なければならない。

 それがさしあたってのエドアルド兄妹のしなければならない仕事だった。
 初夏の夜は短い。だが東の空が白み始めても空気はひんやりと冷たく、霧があたりをうっすらと覆っていた。 人も動物も木々の緑も点々と建つ家の屋根までもが、まだ眠りをむさぼっているようだ。 何事が起きるのかと落ちつかない様子の馬達を宥めすかして鞍をつけ、荷を乗せる。足元を濡らす露草が、しっとりとやさしく足音を消してくれる。
 アリアは家の戸に鍵を締め再び馬の所に戻ると、明かりの消えた家を振り返った。
 切妻屋根のあの窓がアリアの部屋だった。三部屋に父の書斎、食堂兼台所しかないの農家づくりの小さなこの家に長く住んだ訳ではないが、それなりに思い出深いものがある。 父がいて兄がいて、静かで落ちついた生活があった。
 山があり、森や湖があり、狩をして魚を釣り、小さな畑で野菜をつくり、食べて行けるぐらいの蓄えもあり、たぶんこのままここで生涯を過ごすのだろうと思っていた。
 だが、それはこの体を取り巻く霧のように、儚い幻のようなものであるとどこかでアリアは思っていた。 だからこうして、もう戻らないであろうわが家を見ても特段な感情がわき起こらないのかもしれない。
『しょうがないよな』
心の中でそう呟くと、アリアは兄に続いて馬にまたがった。
「行くぞ」
 エドアルドが馬の腹を蹴って、進みだした。
 アリアの馬が自然にそれに続く。
 エタニア国の西、カンタリア領から丸一日離れた農村。 ここからタニアに向かうにはまずカンタリア領に入らなければならない。 そして、その行程に二人には暗黙の了解があった。
 カンタリア領内の教会墓地。
 教会の小者も起き出さないぐらいの早朝、アリアは途中で摘んだ白いマーガレットを一つの墓標の前に添えた。
「母上」
 エドアルドが肩膝をついて、胸に十字を切った。
 一歩引いてアリアは立ったまま墓標を見つめた。  
 エドアルド兄妹の母親がこの世を去って8年。アリアが母の墓を訪れたのはこれが初めてだ。
 父やエドアルドは時折母の墓を訪れてはいたが、アリアは嫌がり、父親もそれを強要したりはしなかった。
 本来なら父親もこの墓地に眠るはずだった。もしかしたら自分たちももうこの場所には訪れることができないかもしれない。ひとりきりになってしまう母に、アリアは心底申し訳ないと思った。 父の死はアリアやエドアルドの全く知らないところで起こったことだ。しかし、母が死んだときにこの家の運命が狂ってしまったのだ。
 エドアルドは立ち上がりアリアを見て、口元に笑みをつくった。母に何を祈ったのかアリアにはわからなかい。しかしアリアもエドアルドにぎこちない微笑みで答えた。
 
 ここからどこへ行こうとしてるのか、アリアにもエドアルドにも漠然としか掴めないでいた。
 わかっているのは、父の仇を討つ事だけ。
 しかし、それがどんな相手なのかはわからないのだ。
 街道に出る頃、山の稜線から朝日が差し込んだ。 霧がだんだんと晴れてきている。朝もやのなかに浮かぶ一本の道。タニアに向かう街道。この道を進むことだけが、エドアルド達に与えられたたったひとつの選択支のように思えた。霧が晴れればさらにその向こうまで見えるかも知れない。 希望といえるのは、そんなささやかなものしか二人にはなかった。
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「殿下」
 アデリーヌの部屋から出たメルキオに宮廷の小者が耳打ちした。
 自分の執務室に戻ると、すでに一人の男が控えていた。 腰掛ける間もなく、メルキオは男に単刀直入に声をかけた。
「見つかったのか」
「はい」
男がひざまづいたままの姿勢でメルキオに差し出した。
大人の手のひら程の鏡である。細かい金の装飾がついた美しいものだった。
「確かにユーシスの使っていた鏡だ」
しかし鏡の部分に赤く文字が書かれていることだけが以前と違う。文字ははっきりと亡くなった王子の名が記されてあった。
「…カミーラの時と、同じだな」
鏡を持つメルキオの手が震えた。 メルキオは鏡を床にたたきつけてしまいたい衝動をかろうじて押さえた。
「メルキオ様」
「わかっている…!」
「鏡はユーシス様のお部屋の天井裏にございました。カミーラ様の時は床下。いずれにしましても宮廷内にあやしい者が紛れ込んでいると考えてよろしいかと」
「…うむ」
言葉少ないメルキオの返事に男は続けた。
「奥向きにわたくしの手の者を手配致しました。あとは証拠を掴み、背後にあるものを…」
「後ろにいる人物はわかっている! わかっているのに手が出せぬ!」
だんっ!と拳を机に叩きつけてメルキオは押し殺した声で男の言葉を遮った。
「なんとしても確たる証拠を掴まなくてはなりません」
「いつその証拠がとれるのか! その間にマテオやユリアも同じように呪詛されるのかもしれないのだぞ」
苛立ちを隠しきれないメルキオを前にしても、男の方は冷静な態度を崩さない。

 カミーラ王女は、高熱を出す数週間前から愛用していた手持ちの鏡を探していた。そのときはさして気にも止めていなかったが、王女の死に不審を抱いたメルキオが極秘に探させた結果、王女の居室の床下からカミーラ王女の名が赤く記された鏡が見つかったのだ。

 呪詛。

 この言葉がメルキオの胸によぎった。 相手を呪い殺す方法として、相手の鏡を使うのは最も効果的だ。
 だが、なぜカミーラを。 カミーラが死んで利を得る者がいるのだろうか。 隣国との国交に反対する国内の急進派か? それとも隣国の…。
 呪詛はもともとは異教徒のものだ。 しかし東のオリエンタルの国々や南の大陸との交易により大昔から文明が交差するこの地では、ありとあらゆる知識が流れ込む。 呪詛という人が人を呪い殺す方法も古くから伝わるものである。
 様々な仮説を立て、疑わしき人物には念入りな探りを入れたが、特定はできなかった。
 しかしユーシスまでもが熱病で死んだ時、カミーラはただの警鐘にすぎなかったのだと知った。
『あの雌狐め…!』
 父王が日増しに自分を疎ましく思っていることは、なによりもメルキオ自身がよくわかっていた。 それに油を注いでいるのが、あの側室ティスナであることも。 今回の事は父王が命令を下してないにしても、ティスナが絡んでいる事に間違いはないだろう。
 これは極秘に事を進めなければならない。 敵はティスナだけではない。 近隣諸国につけいる隙を与えることは何にも優先して避けなければならなかった。

「これほど強力な呪詛が出来る人物は限られてくるはずです」
男が言った。
「そして呪詛を行う場所も」
男はその場所を淡々と言葉を紡ぐ。
「おそらくナミル山かと」
メルキオが男を振り返った。
「ナミルは聖域だぞ」
「聖域なればこそ、です。容易に人が立ち入らない場所。たちこめる霊気。これを利用しない手はないと思われます」
メルキオは黙って考え込んだ。
 今更ナミルを探したところで、何も残ってはいないだろう。 だがナミル山を探る動きを見せれば何かが釣れるかもしれない。 相手の影を捕らえられたら次の手を打つことができる。 しかし……。 
「ナミルを探られた相手は、 マテオ様が継承者の位をお継ぎになった時必ず動き出します。 罠を張るならばそれが好機かと」
「マテオを犠牲にはできぬぞ」
「マテオ様が使った鏡を盗ませたりはいたしません。 本人が使用していない鏡では呪詛の効果は出ないでしょう。 時間は稼げます」
長い沈黙が訪れた。
 メルキオの額に汗が浮きだしていたが、拭う事すら忘れているようだった。
「誰を、ナミルに…?」
眉を寄せ、視線を落としてメルキオが言った。 探りを入れる人物は一体誰が。
「まずはメルキオ様が気づいてないと思わせる事が肝心です。 東の宮はおろか宮廷にも出入りせず、しかしまるきりの無名ではなく、世情に通判断力に優れ、腕のたつ人物」
思い当たる人物が一人だけいる。
「カルマールか…」
男は応えなかった。 応えない事が答だとメルキオはとった。
「あの男が果たして動くか…。 わかった、もうよい。 鏡は元の場所へ。 あとは追って沙汰する」
「は」
男が辞し、一人残ったメルキオは呟いた。
「カルマール…」
 8年前の事件がなければ、おそらく自分の右腕となっていた男。こんな形で会わなければならないとは。
「それもエタニアの為だ」
窓から差し込む夕日をメルキオは目を細めて見つめた。
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 エタニア国の首都タニアに、再び不幸な出来事が起こった。

「神はわたくしたちの子を、なぜそんなに愛されるのでしょう」
 エタニア国、王太子妃アデリーナは、小さな棺に覆いかぶさるように咽び泣いた。
「カミーラにつづいてユーシスまで…。あの子たちがいったい何をしたと言うのです」
「アデリーナ…」
王太子メルキオは、妃の肩を胸に抱き寄せた。
「…殿下…。 お許し下さいませ。 わたくしが至らなかったのです。お世継ぎのユーシスまで亡くしてしまうなんて」
自分の胸にすがって泣くアデリーナの背を、メルキオはそっと撫でた。
「そなたのせいではない」
「ですが、シルバキアの父は何かがあると疑いを持ちますわ」
アデリーナは北の隣国シルバキア国の王女であった。
「病で亡くなったのだ。 こればかりはどうにもならぬ」
 そう言ったものの、メルキオの瞳は空の一点を睨み付けていた。
『このままではおかぬ…』

 エタニアの国王オルギウス二世は67歳と高齢でありながらまだ国を治めていた。 王太子のメルキオは42歳。 戦乱を生き抜いてきた豪傑なオルギウスとは逆に、温厚で人望も厚く、知己に富み、鋭い決断力をも持ち合わせる人物と国内外での評価は高かった。
 それもそのはず、政治の実務は今ではすべてメルキオがこなしており、ただ昼に夜に宴を催しては国庫を浪費している国王を見れば、さすがに臣下たちも国王よりもメルキオにかたむくというものだ。
 そんな噂が耳に入れば、我が息子のこととはいえ、国王オルギウスにとっておもしろいはずがなく、何かにつけてはメルキオの判断に口をはさみ、政策を二転三転させ国内に混乱をまねいていた。

 国王オルギウスにはもう一人息子がいた。
 側室に生ませた子で、11歳になるキアヌである。 容姿も学力も人並で、特に傑出したところはなかったが、年をとってからの子ということで、オルギウスはこの息子を盲愛していた。
 そんな折り、メルキオの長女カミーラが高熱を発し急逝した。 15歳になるかならないかの乙女ざかりだった。 死因は熱病だが、何が原因で発病したのか結局不明のままだった。 シルバキア国との縁談が決まったばかりだったため、何者かによる暗殺も噂された。 王太子妃に似て、愛らしく美しい姫君の訃報は、タニアの街を沈ませた。
 そして、そのわずか半年後、今度は若君のユーシスまでが同じように高熱で身罷ったのだ。
明るく闊達だった11歳の王子の死を嘆く皇太子妃のアデリーナはとうとう病の床に伏せてしまった。

「そなたがしっかりしなくてどうする。まだ幼いマリオスやユリアがいるではないか。あの子らの為にもそなたが元気にならなくては」
 メルキオがやつれたアデリーヌを見舞う。
「申し訳ありません、殿下。わかってはいるのですけれど…」
 今、宮中ではアデリーヌがシルバキアの出であるから、王子や王女が殺されたのだとの噂が広まっている。それをアデリーヌも耳にしたのだろう。

 シルバキア国とはかつて領土問題で争いが耐えなかった。小競り合いを繰り返しては国境の位置が変わる。そんなことが長年続いていた。
 シルバキア国は他国との本格的な戦争の準備も進めていたこともありエタキアとの停戦同盟を結んだ。アデリーナがメルキオに嫁いだのはそういう背景のもとにあった。
 エタニアにとってもこの同盟は西の隣国リンデアへ侵攻するに必要なものだったのだが、国王オルギウスはシルバニアから嫁いできたアデリーナに冷たい態度をとることが多かった。

 この噂も父王の口から出たものだろうとメルキオは思った。
 国王に対する憤りもあるが、同時に臥せる妃に対してもメルキオは歯がゆさを感じる。
『だからこそ、今が大事な時だというのに』

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 アリアは夜が嫌いだった。
 決まって夢を、あの日の悪夢を見てしまう。決して忘れさせてはくれないあの出来事を。
 声にならない叫び声をあげて目を覚ますと、今度は夜の闇が自分を襲ってくるようで、あの日の森の闇をまた連想してしまう。自分の体をきつく抱いて、固く目をつむり、朝が来るのをじっと待つ夜は幾度あったか数え切れない。

 それが、いつからか、気がつくとぱったり悪夢を見なくなった。
 かわりに誰かがいつもそばにいてくれる夢を見るようになっていた。夢の中ではその人物の姿も声もはっきりしているのに、目が覚めるとその面影は跡形もなく消え去っている。
 不思議に不安は感じられなかった。むしろ、その夢を見る度に安堵感に満たされる。 なつかしく、切なく、時に知らずのうちに涙がこぼれていたこともあったが、夢の中でだけは、アリアは自分がこの上もなく幸福だと思えるのだった。

 なぜ、いつからそんな夢を見るようになったのだろうか。

 もしかしたら、これは、自分の前世の夢なのかもしれない。

 アリアは以前オリシスから聞いた、遥か東の地の信仰の話を思い返した。
 彼の地では、人は幾度となく生を繰り返すものと伝えられているらしい。その伝承と結びついた宗教を、彼の地の人々は信仰しているとオリシスは言っていた。
 ここ、エタニアの国では、キリスト教が国教となっている。キリスト教では人は死ぬと天へ召され、永遠にそこで暮らすのだと教えられている。
 アリア自身キリスト教徒ではあるものの、神の存在を信じていると言い切れなかった。生まれた時からのただの習慣として祈りを捧げているだけだ。神父の説教も、聖書の内容も、時折どうしようもなく受け付けない自分がいる。 自分ほど罪深い人間がほかにこの世にいるだろうか。 告白したところで己の罪が消えるわけではないのだと。
 しかし、彼の地の信仰はアリアの心に素直に受け入れられた。ただオリシスが聞かせてくれた話だからなのかもしれないのだが。
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昔、NHKで「風の隼人」という時代劇ドラマを放送していました。

原作は直木三十五の「南国太平記」
幕末、島津藩のお家騒動、いわゆる「お由羅騒動」を題材にした物語。

主演は 勝野洋、夏目雅子、西田敏行
特に夏目雅子演じる綱手が美しかったことを覚えています。

これはそのドラマをベースに、舞台を中世ヨーロッパに置き換えたもの。
10年ぐらい前に書いたものなので、手直ししながら1週間に1回ぐらいずつ更新していく予定です。
気長におつきあいいただければ幸いです。
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